もてぎで表彰台を争った大湯都史樹と佐藤蓮。ふたりが振り返る白熱バトルと最終戦鈴鹿への学び
11月2~3日に栃木県のモビリティリゾートもてぎで行われた2024スーパーGT第8戦。GT500クラスは36号車au TOM’S GR Supraの圧勝で終わったが、その後方では38号車KeePer CERUMO GR Supraと16号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTによる激しい3位表彰台争いが展開された。 【写真】KeePer CERUMO GR Supraを追うARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16/2024スーパーGT第8戦もてぎ 逃げる38号車KeePerの大湯都史樹と、追う16号車ARTAの佐藤蓮。それぞれの立場からあのバトルを振り返ってもらった。 ■「抜かれたら絶対に離されるから無理をしてでも抑えた」大湯都史樹 「8号車ARTAはさすがに無理でしたけど、16号車に対しては終盤だったので守り切れるかなというところで、あの手この手を使って何とか守り切りました」 そう語るは38号車KeePerの大湯。レース序盤は石浦宏明が上位争いを制して2番手に浮上し、22周目にピットイン。大湯が後半スティントを担当した。しかし、予選日が雨だったこともあり、ドライコンディションでのデータが取れておらず、後半はピックアップの症状で苦戦したという。 「タイヤの温度レンジも合っていない状態でしたし、ソフト目のタイヤでピックアップもかなり付いていた状況で、常にペースが良くない状況でした。なんとかGT300クラスをうまく使いながら(他車と比べて)そこまでのペース差にならないようにしていましたけど、単純なペースで言うとかなり大きな差になっていたと思います」と大湯。 8号車ARTA CIVIC TYPE R-GTにパスされて3番手に下がった大湯だが、その直後に迫ってきた16号車の佐藤に対しては徹底的にブロックし、終盤の約10周にわたってポジションを死守する動きをみせた。 特に1、2コーナーや3コーナーでサイド・バイ・サイドになるシーンがあったが、大湯は冷静に対応。それでも残り5周のところで一瞬の隙をつかれて前に出られるが、すぐにクロスラインで4コーナーのイン側を取り返し、順位を取り戻した。 このときの状況について大湯は「向こう(16号車)がイライラしていたのは数周前から分かっていました。本当はブレーキ勝負で行かれないのがいちばん良いのですけど、あのときはおそらく(16号車が)止まりきれないだろうなというラインだったので、一瞬前に出られたものの『そうやって飛び込んだら、そうなるだろうな』と思って見ていました。そこでうまくクロスをかけることができたので、抜き返すことができました」と振り返った。 かなり接近された状態が続きながらも主導権は握っているように見えたが「でも、基本的には1回追い抜かれてしまうと相当な差になってしまうという状況だったので、抜かれずに何とかいけました。最後の周はいつ抜かれてもおかしくない状態でした」と大湯。 「あと1周あったらヤバかったかなと思うくらい、相当なペース差があったと思います」と3位を死守できたことに関して胸を撫で下ろしていた。この結果で38号車KeePerはランキング3位で最終戦に臨む。 ■「追い抜くなら3コーナーしかなかった」佐藤蓮 一方、0.1秒差で表彰台に届かない結果となった16号車ARTAの佐藤。マシンを降りるとガックリと肩を落としてチームの元へ戻っていく姿があった。 そこからしばらく時間が経って取材に行くと「抜けませんでした!」と笑みを交えながら開口一番に発したものの、あのバトルを制することができなかった悔しさは大きかった様子だ。 「8号車と同じくらいのペースで走れていて、38号車がピックアップで苦しみ始めたところでバトルになりました。そこでアプローチをするもなかなか前に出ることができず、抑え切られてしまいました」と佐藤。38号車KeePerに追いついてからは、自分たちにアドバンテージがあることはすぐに見抜いていたという。 「全体的にブレーキングでこちらに分があるようでした。(もてぎは)1コーナー、3コーナーなどハードブレーキングをするコーナーが多いサーキットなので、常にそこで追いつくという展開でした。トラクションもこちらの方が良かったので、そういったマージンがあったので近い距離で走ることができていました」 そのなかで、何度も公式映像に映し出された“3コーナーでの攻略”を念頭に組み立てていったと語る。 「抜けるポイントとしては3コーナーしかなかったです。1、2コーナーもこちらが速かったので、そこで顔を覗かせて相手の加速を鈍らせてみました。3コーナーに向けて外からいったり、内側からいったりいろいろなアプローチは試みたのですけど……ちょっとチャンスを掴みきれませんでした」 残り5周で一瞬前に出たときについても「あそこでもう少し止まることができれば、クロスを取られないラインで立ち上がることができたのですが、止まりきれなかったです」と佐藤。 その後も2コーナーでは縁石外側のターマックゾーンに飛び出しながら大湯に食らいつくシーンが見られ、それをピットで見守っていた相方の大津弘樹は「スーパーフォーミュラでリアム(・ローソン)が回ったときのことを思い出して『ヤバい! 飛ぶんじゃないか?』とヒヤヒヤしながら見ていましたよ……」と隣で本音を漏らしていた。 佐藤にとってもてぎは悔しい結果になったが「学びが多い一戦だったので、これを活かして最終戦でまた頑張りたいと思います」と前を向いていた。 いよいよ12月7~8日の鈴鹿で最終戦を迎える2024年のスーパーGT。GT500クラスは全車ノーウエイトでのレースとなるだけに、もてぎでの大湯と佐藤のようなバトルが随所で繰り広げられるはず。最終戦で笑うのは一体誰になるのか、誰も経験したことのない12月の最終決戦は今週末に迫っている。 [オートスポーツweb 2024年12月02日]