いきなり“心理戦” 4輪総合争う上位勢が翌日の後方スタート狙う ローブ悪びれず「ゴールの手前で数分間止まっていたよ」
第47回ダカールラリー 第1ステージ 4日 ビシャ(サウジアラビア) ペン=田村尚之 カメラ=多賀まりお 本格的な競技が幕を開けた途端、4輪総合トップを争う上位勢が“心理戦”に突入した。順位が翌日のスタート順になるため、ステージ後半にペースダウンする車両が続出。最初のヤマ場となる第2ステージの48時間クロノに向け、前走者のわだちを追える後方ポジションを狙う戦略だ。特にダチア勢はナッサー・アルアティヤ(54)=カタール=が21位、セバスチャン・ローブ(50)=フランス=も25位まで後退。ローブは「みんな同じさ」とうそぶき、いきなり混乱模様だ。 最後のチェックポイントまでトップを走っていたTGRのルーカス・モラエスが、ビバーク到着寸前で一気にペースを落とす。最終的に7位まで後退したにもかかわらず、「あ~良かった。最終盤に5~6台が止まっていたから、僕も倣ったんだ。いい戦略。チームに感謝したい」と笑顔。いつもとは真逆で、順位を落としたことにもろ手を挙げて喜んだ。 この日の最速はTGRのセス・キンテロ。僅差の2位に続いたMINIのユレイン・シシェリは「上位勢は(順位操作を)やってくるはずだから、逆に飛ばしてやろうと思った」と、あえて別の道を選んだと明かした。結果的にトラブルで“金星”は逃したが、「あしたは絶対に勝てないしね」と間隙(かんげき)を突いた戦い方に悔いはない。 上位勢の狙いは第2ステージを後方からスタートすること。先に走り出す2輪は別ルートになるため、第1ステージで4輪上位につけると、真っさらな道なき道を突き進まなければならない。そのためナビゲーションの負担を少しでも軽くしようと、何台かのクルマに先行させ、そのわだちを追いながらペースを上げていく戦略を採った。 ダカールなどのラリーレイドでは、スタート順調整は常とう手段だ。昨年の覇者でMスポーツ・フォードのカルロス・サインツSrも8番手に調整している。ただ、ダチアのベテラン2人は、あまりに露骨だった。 アルアティヤは「ゴール前でパンクして順位を大きく下げた。(トップから)5分近くギャップを背負ったけど、あしたのスタート順は21番手。いいじゃないか」と不敵に笑う。不可抗力を装うかわいげを見せたものの、同僚のローブは“直球勝負”。「ゴールの手前で数分間止まっていたよ。みんなも同じようなことをやっていたし」と悪びれるそぶりもない。 各チームが採った戦略の正解は、すぐ明らかになる。2日間にわたり1000キロの競技区間を走る48時間クロノで、答え合わせが待つ。
中日スポーツ