オンワード樫山の「OMO型店舗」成功の秘訣とは? 通常店舗の売上を2割超上回る理由、月商1億円店舗の事例などを解説
通常店舗と比べると、売上高は2割以上も上回るOCS。ショッピングセンター内に出店している店舗では売り上げが特に堅調で、2024年2月期の売上高は通常店を53%上回っている。
┌────────── OCSでは、販売スタッフはブランドの垣根をまたいで幅広いスタイリングの提案ができるので、購入につながりやすいと考えられます。それが顔なじみのスタッフなら、お客さまにとってはより購入意欲が高まりやすくなります。「クリック&トライ」は通常の店舗でも導入が進んでいます。利用客は増加しており、利用するお客さまの購入率は約50%です。(前川氏) └────────── オンワード樫山のブランドは高価格帯のアイテムが多く、顧客にとっては試着することで買い物の失敗を防げるというメリットがある。また、オンワード樫山ではサイズ展開が多いことから、店舗の在庫が少なくなりやすいサイズは「クリック&トライ」の利用頻度が高くなる。 ■ 月商1億円を売り上げたOCS店舗の成功事例
100店舗以上あるOCSのうち、信頼関係のある販売スタッフの提案によって複数ブランドのアイテムのクロスセルが頻繁に起きている店舗が、2024年3月20日に岩手県の商業施設にオープンした「パルクアベニュー・カワトク店(岩手)」だ。
オープン以前、オンワード樫山が運営するブランドは、「パルクアベニュー・カワトク」内にレディース向け3店、メンズ向け3店の店舗を構えていた。それらの店舗を、レディースとメンズをそれぞれ1店舗に集約したOCSにリニューアルした。売り場面積は両店舗とも、バレーボールコート2面分の広さに該当する約100坪。両店舗合わせて、オープンから1か月で売上高は1億円となった。現在も好調に推移しているという。 ┌────────── 岩手県は百貨店自体が多くないため、販売スタッフは同じブランド・店舗での勤務期間が長くなります。そのため、通い続けるお客さまと顔なじみになりやすい。OCSにも以前からお付き合いのあるお客さまが多数来店しています。そして、顔なじみのスタッフからの提案が後押しとなり、「あなたが勧めるなら」とこれまで購入したことがないブランドのアイテムの購入につながっています。(前川氏) └────────── 「パルクアベニュー・カワトク店」のレディース向け店舗が、来店者数の多い1階のフロアに出店していることも売上アップの要因になっている。 ■ OCSを通じて潜在ニーズを発掘 オンワード樫山の2024年2月期の販路別売上高構成比は、百貨店の出店店舗が38%、ショッピングセンターとその他に出店している店舗が33%、ECサイトが29%となっている。 ┌────────── DtoCブランドなどではECサイトでの販売率が高くなるケースがあるかもしれませんが、EC利用だけでなく実店舗に足を運んでもらえることで、新たなブランド・アイテムとの出会いの創出や売上アップにもつながると考えています。OCSを含む実店舗は貴重な役割を担っています。(前川氏) └──────────