「信州大王イワナ」ブランド化へPR 通常の倍近い大きさでも肉落ちせず
長野県が8年がかりで生み出したイワナの新たな養殖品種「信州大王イワナ」の本格出荷が9月1日から始まりました。信州大王イワナは通常のイワナの倍近い大きさに成長しますが、卵を持たないため肉落ちしないまま、1年を通じておいしく食べられるのがセールスポイント。長野県内の旅館や飲食店を皮切りに長野県産ブランド魚として販路の拡大を図っていきます。 【動画】ウナギ完全養殖の実験成功から6年、いまだ市場に出回らない理由とは
「お披露目会」では2キロ級も登場
長野県水産試験場によると、信州大王イワナは雄性ホルモンで雌から雄に性転換した「性転換雄」の精子で受精させた卵を温水にさらし、通常2組の染色体を3組に増やして成熟しない「全雌三倍体」のイワナに変えます。これにより大きくなっても卵を持たないため、やせ細ることがなくなります。 秋になっても成長が鈍らないこのイワナは、ふ化から3年で重量が1キログラムを超え、普通のイワナの倍近いボリュームになります。このため魚体に占める可食部が62%と普通のイワナの47%を大きく上回ります。 また、サケ・マス類との比較ではカロリーと脂質が低く高タンパクで、県は「とてもヘルシーな食材」としています。 今年度は食用魚として9月から6トンほどの出荷を見込んでおり、県は信州サーモンとともに長野県産のブランド魚としてPRに力を入れるとしています。 今年度の稚魚は9月下旬までに4万匹を27の養殖業者に出荷する予定。今年1月にふ化した稚魚で体長7センチに育っており、約2年で体長45センチ、体重約1キログラムに育つ見込みです。
1日には長野市内で試食を兼ねたお披露目会が開かれ、県と水産業界、調理師会、ホテル業界、県議会など関係者約80人が参加。信州大王イワナを使った多彩な料理を味わいました。出席者の間では「くせがなくさっぱりしていておいしい」と好評価。体長60センチ、体重2キロに育った大型イワナも持ち込まれ、「これは大きい」と会場を沸かせていました。 長野県調理師会の湯本忠仁会長は「いつも旬の魚として1年中楽しめる。これまでの川魚のイメージを変えることになる。臭みもなく歯応えがあって滑らかな食感がおいしさにつながっている。刺し身は薄く切らないほうが食べ応えがある。体重が1・5キロを超えると味が変わり、より滑らかになる」と熱心に語っていました。
----------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説