ワーナー・ディアンズが語る「超速ラグビー」の本質。
興奮した。たしなめられた。 ラグビー日本代表のワーナー・ディアンズは7月6日夜、キャンプ地の宮崎にいた。チームメイトと飲食店へ行き、関連チームであるJAPAN XVの対マオリ・オールブラックス戦を観た。 「地鶏を食べながら」 約2週間半の活動と約1週間の休息を経て、1日からJAPAN XVとともに宮崎で汗を流していた。試合に出る面々が会場の愛知・豊田スタジアム付近へ移動してから、筋力、持久力を強化した。特に当日にあたるこの日は、ゲームメンバーと同じ走行距離、強度を意識するようスタッフに促されていた。 疲労困憊のままナイトゲームのキックオフを迎え、街に出て、仲間が26-14で制する80分を見守ってきたわけだ。すると…。 「すごい、盛り上がって。(店員に)静かにして、って言われました」 エディー・ジョーンズヘッドコーチを9年ぶりに復職させた日本代表は、今年6月6日に本格始動。愛知の熱戦は、現体制にとっての初白星になった。 今後の代表定着を目指す層からなるJAPAN XVは、失敗を糧にした。7日前の東京・秩父宮ラグビー場でのマオリ・オールブラックス戦を10-36と落としてから、防御を改善した。おかげで愛知では堅守で光った。 攻めても組織的にスペースを攻略していたとあってか、応援役だった22歳も心が躍った。 「今回、ディフェンスが非常によかったです。見ていて楽しそうなラグビーをしているから、僕も試合に出たいと思いました」 ジョーンズが唱えるのは「超速ラグビー」。万事におけるスピードが求められる。 ペナルティーキックから速攻を仕掛けたり、陣地を問わず素早く展開したりすること自体が「超速ラグビー」なのではなく、それらの動きを即決しておこなう態度そのものが「超速ラグビー」なのだと取れる。 初勝利の折にはロングキックと献身的なチェイスで主導権を握ったが、現場の戦士がそのプレーを即決したという意味では「超速ラグビー」で魅了したと表現できそうだ。 身長201センチ、体重117キロの若きLOは、6月22日のイングランド代表戦(東京・国立競技場/●17-52)でそのコンセプトのもと戦っている。その経験も踏まえてか、「超速ラグビー」の本質をこう看破する。 「毎回、毎回、同じ超速ラグビーじゃなくて、相手によってどんな超速ラグビーになるかというのもどんどん変わっていくと思います」 中学2年でニュージーランドから来日し、進学した千葉の流経大柏高で急激に身長を伸ばした。2021年には大学を経ずに東芝ブレイルブーパス東京に入り、同年秋にテストマッチ(代表戦)デビューを果たしていた。 これから期待されるのは将来的な欧州プロリーグ挑戦、さらには2度目のワールドカップ出場か。ワールドカップは’27年にオーストラリアで開かれる。 もっともいまのディアンズは、次の一戦を注視する。 引き続き宮崎でキャンプに根を張り、13日に日本代表として挑むジョージア代表とのテストマッチをにらむ。 向こうは世界ランクで日本代表より二つ下の14位も、伝統的にスクラムを得意とするタフな国だ。 「フィジカルの場面がタフな試合になると思います。それを自分たちのディフェンスが止められるか、アタックで超速ラグビーができるかで、勝てるか、勝てないか(が決まる)」 おこなわれるのは宮城・ユアテックスタジアム仙台である。 (文:向 風見也)