「子育て世代」の現実 小林美希さんに聞く
保育所を利用している児童は約226万人いるが、保育士不足が深刻化している。規制緩和に伴って保育所に民間資本が参入し、アルバイトや派遣労働者も活用されるようになった。しかし、民間でも保育所には補助金が投入されるため、人件費を削減して利益につなげようとしがちだ。「子育て世代」の出産や育児をめぐる環境の現状について、『ルポ 保育崩壊』(岩波新書)などの著作がある小林美希さんにインタビューした。
――なぜ『ルポ 保育崩壊』を書いたのですか。 小林 現在の日本では、子育ての中で苦しんでいる人が大勢います。母親が孤立している中、保育所の実態というのはどうなのかということが問題だと思ったからです。仕事があって保育所がみつかっても、その保育所というのは大丈夫なのかということが聞かれました。保育所の現状を見ると、様子がおかしく、親からも不安の声が聞かれます。保育所の労働環境にも問題があり、離職率が高く、ベテランが育たないという問題があります。こういう状況を、正面からとらえなくてはならないと思ったからです。 ――保育所ではエプロンとテーブルクロスを一緒にして食事をさせたり、食事を時間内に食べ終えさせようとしているような現状が書かれていますが、なぜそうなるのですか。 小林 規制緩和により、人件費比率の高い保育業界に民間企業が多く参入しています。その中で保育の質が低下し、保育体制の不安が問題視されています。それに対し、子どもをていねいにみないというところは、教育を考えたら大丈夫なのか、という考えを持っています。 ――なぜ、『ルポ 母子家庭』を書いたのですか。小林さんはこれまで、雇用と出産の問題を中心に取り組んできましたが、母子家庭の問題に目を向けたのは? 小林 子育て環境がうまくいっていないことのしわ寄せがいくのはシングルマザーです。ここ数年、私は女性の労働問題に力を入れ、正面から取り組みたいと思っていたので書きました。また、子どものいる働いている女性を見ると、男性が家事や子育てをせず、事実上の母子家庭のような人も多いからです。そういった人たちの考えを伝えたいからです。