「梅毒」の新規報告件数…東京は史上最悪の昨年を超える勢い
独り寝の寂しさが身に染みる秋。今週末はアバンチュールを求めて歓楽街に足を運ぼうか、そんな人もいるのでは? たまたま酒場の隣に座った人と意気投合して大人の関係に……そんな夢を見るのもいいが、気を付けたいのが性感染症だ。とくに「梅毒」は昨年よりも少ないとはいえ、依然として20代女性を中心に感染が広がっている。 WHOが緊急事態宣言…重症化リスクの高い「エムポックス」世界流行の兆し 国立感染症研究所が5日に発表した感染症発生動向調査(IDWR)速報データ第43週(10月21~27日)によると、梅毒の全国新規感染報告件数は、年初からの累計で1万2014件となった。これは現在の方式で統計を取り始めて以来、過去最多を記録した前年同期の1万2434件より420件少ないものの、ハイペースと言っていい。 実際、都道府県別に見ると、19都府県で昨年より累計件数が上回っている。性感染症の専門医で「プライベートケアクリニック東京」新宿院の尾上泰彦院長が言う。 「気になるのはやはり東京です。IDWRの速報データでは東京都の第43週は新規44件・年累計3048件で、昨年同期比1件少ないだけ。東京都が独自集計した第43週データでは、新規70件・年累計3094件となっています。昨年第43週の東京都独自データでは年累計3085件でしたから、すでに上回っているということです」 なお、IDWRと東京都のデータが異なるのは、東京都の数字が保健所が報告を受理した件数に対し、感染研の数字は医療機関が梅毒と診断した件数だからだ。 ちなみに東京都集計の第43週の梅毒の新規届け出70件の内訳は、男性47件、女性23件。年代は10代1件、20代26件、30代14件、40代18件、50代6件、60代5件だった。推定感染経路は64件が性的感染(同性間7件、異性間51件、両性間2件、性別不明4件)、6件が不明だった。 ■欧州ではエムポックスの脅威が高まる 注意したいのは、怖い性感染症は梅毒だけではないことだ。梅毒と同じく肌にできもの(皮疹)ができて、梅毒と同じように性的接触で感染しうる「エムポックス症(旧サル痘)」の脅威が迫っていることも気を付けたい。 英国健康安全保障庁(UKHSA)は10月30日、国内でより重症化しやすいエムポックス(クレード1b)感染者を初めて確認したと発表。感染者は最近、クレード1bが発生しているアフリカを旅行していて、現在入院治療中だという。その後、この感染者の家庭内接触者2人の感染が新たに確認されている。 世界保健機関(WHO)はエムポックス症の感染拡大に対して「国際的に懸念される公衆衛生上の懸念」を2024年8月に宣言。11月5日には、この感染者が欧州内初の感染例だったことを明らかにし、欧州各国に対してクレード1bを封じ込めるための迅速な行動に備えるよう警告している。 日本では、今年に入り累計18件のエムポックス症の新規感染例が報告されている。第43週の東京都の梅毒の新規届け出70件の推定感染地は国内50件、ドイツ1件、不明19件だった。欧州から性感染症を持ち帰る人もいることも記憶しておこう。