怪我から復帰も「使ってもらえない」 名門校でキャリア暗転、大一番前の声掛けに「驚いた」
流通経済大柏3年生DF富樫龍暉、怪我を境に味わった紆余曲折
頼もしきファイターがついにスタメンに名を連ねた。流通経済大柏(千葉)の3年生DF富樫龍暉は3回戦の大津(熊本)との「事実上の決勝戦」と呼ばれるビッグマッチで今大会初出場をスタメンで飾った。 【実際の映像】「これ入るの?」「さすがプロ内定」流経柏逸材ドリブラーが決めた圧巻ゴラッソの瞬間 プレミアリーグEAST第12節の尚志(福島)戦でスタメン出場をして以来、約4か月ぶりとなる満を辞しての出場だった。 「試合に入る前は緊張していて、不安などはありましたが、いざ試合が始まってみると一気に吹き飛びました。バックスタンドから大きな声援が飛んでくるし、周りに頼もしい仲間もいて、『やってやろう』という気持ちが強くなった」 右サイドバックに入った18歳は空中戦の強さと対人の強さをフルに発揮。マッチアップしたMF中村健之介に対してだけではなく、サイドに流れてくるFW山下景司をケアしながら、激しい球際や裏への侵入を素早い身のこなしで阻むなど、フレキシブルに動いて2重、3重の攻撃を仕掛けてくる大津の攻撃にしっかりと応対した。後半13分に交代するまでは相手の攻撃をゼロに抑えた。 さらに前半35分には大仕事をやってのける。自陣深くでCB(センターバック)佐藤夢真のパスを受けて顔を上げると、大津のディフェンスラインが高く設定してあることと、裏のスペースを狙っているFW山野春太の姿を見逃さなかった。 「動き出しが見えたので、1発で通そうと思った」 ワントラップから相手が寄せ切る前に右足を一閃。鮮やかな軌道を描いたボールはトップスピードで抜け出した山野の足もとにピタリと届き、貴重な先制弾を導き出した。 富樫の攻守にわたる大貢献もあり、試合は2-1で勝利。ビッグマッチを彩る主役の1人となった。 「これまでの思いをこの試合にぶつける気持ちで臨みました」 試合後、彼は昂る気持ちを口にした。こう語るのには大きな訳がある。富樫は昨年からコンスタントに出番を重ね、サイドバックをメインにプレミアEASTで16試合に出場し1ゴールを挙げている。今年はCBの主軸として不動の存在となっていたが、プレミアEASTの第13節青森山田(青森)戦で負傷して離脱をしてからは、その間に台頭をしてきたキャプテンの佐藤の後塵を拝す状況になってしまった。 「復帰しても練習試合で少しの時間しか出られない時があったり、なかなか使ってもらえなかったりと悔しい思いをしてきました。でも悔しい思いだけではなく、自分に対する歯痒さもあって、色々と悩みました。正直、初戦の佐賀東戦で出番を少し期待していたのですが、声が掛からなかった時は『今大会の出場は厳しいのかも』と思いましたが、エノさん(榎本雅大監督)から前日に『気持ちの整理は出来ているか』と言われた時に、ついに来たと。正直、ちょっと驚いたのですが『出来ています』と答えました」 大一番でのスタメン起用。それは榎本雅大監督が彼に示した期待と最大限の信頼だった。これに応えないといけないという覚悟が芽生えた富樫は、前述したように気迫の守備を見せ、1アシストを記録した。 「少しは期待に応えられたのかなと思います。次はまだスタメンかどうか分からないですが、与えられた時間を全力でやりたいと思っています」 準々決勝の上田西(長野)戦、そして17年ぶりの選手権優勝に向けて。彼の力は必要不可欠だけに、いつ榎本監督に覚悟を問われてもいいように闘志を燃やし続ける。
FOOTBALL ZONE編集部