東洋経済が選ぶ「教育関係者にお薦めしたい」本 2023年を振り返り、2024年に備える1冊がここに
HSCがありのままで幸せになれる教室(著:杉本景子)
子どもたちの多様性に応じた学校づくりが求められる中で、教育関係者が理解しておく必要があるものの1つに「HSC」がある。 1996年にアメリカのアーロン博士が提唱したHSP(Highly Sensitive Person)は、生まれつき敏感な気質をもった人を意味し、とくに子どものことをHSC(Highly Sensitive Child)と呼ぶ。約5人に1人いるといわれており、どのクラスにもいて、おそらくすべての先生が接しているのではないかと考えられる。 思慮深く、他人の気持ちに敏感で、ささいな変化に気が付き、慎重に行動するという特徴がある。そのためHSCにとって学校生活は刺激が強く、緊張やプレッシャーを感じる場面も多いという。ほかの子どもたちには効果的な声掛けや接し方であっても、HSCには逆効果という場合もあり、HSCの子にあわせた指導が学級の安定にもつながる。 そんなHSCの子を理解するのに役立つのが、『HSCがありのままで幸せになれる教室―教師が知っておきたい「敏感な子」の悩みと個性―』(著:杉本景子/東洋館出版社)。 HSCがストレスやプレッシャーを感じることなく学校生活を送るために、教員はどのような環境を心がけるべきか。NPO千葉こども家庭支援センター理事長で千葉市スクールメディカルアドバイザーも務める筆者がわかりやすくまとめている。
教師のための「非認知能力」の育て方(著:中山芳一)
2017年改訂の学習指導要領では、これからの時代に求められる資質・能力として「知識及び技能」に加えて「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力・人間性等」が盛り込まれ、学校現場でも非認知能力の育成が重視されるようになった。 読み・書き・計算などの学力やIQといった数値化できる、評価測定できる認知能力に対し、数値で表せないのが「非認知能力」。評価測定できない、忍耐力や自制心、協調性、コミュニケーション力などを指す。 その中から、『教師のための「非認知能力」の育て方』(著:中山芳一/明治図書)では、学校で活用できる「自分と向き合う力、自分を高める力、他者とつながる力」に着目。非認知能力を認知能力と合わせて育成する方法を、5つのステップにわけて小・中学校・高等学校などの実践例とともに詳しく紹介している。 筆者の岡山大学教育推進機構准教授・中山芳一氏は、岡山県内をはじめ大阪府や京都府などで、非認知能力育成のための研修も行っている。非認知能力の育成について研究する中山氏の知見がたっぷりと学べる1冊だ。