東洋経済が選ぶ「教育関係者にお薦めしたい」本 2023年を振り返り、2024年に備える1冊がここに
DCD 発達性協調運動障害 不器用すぎる子どもを支えるヒント(著:古荘純一)
学習面や行動面に困難さがあるなど、発達障害の可能性のある小・中学生は8.8%、11人に1人程度在籍している(文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」)。 そうした発達障害の1つである「発達性協調運動障害(以下、DCD)」をご存じだろうか。自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などに比べて認知度が低く、多くが見過ごされているという。 転びやすい、着替えができない、なわとびがとべない、自転車に乗れないなどは、子どもと過ごす生活の中で、日常的によくある光景だろう。だが、DCDは、極端に不器用で、日常生活にさまざまな困難を伴う。 協調運動の不具合で起こるため、診断がつかずに困難さを抱えたまま学童期を迎えることが多く、周囲からは理解されず、生きづらさを抱えているケースも少なくない。 『DCD 発達性協調運動障害 不器用すぎる子どもを支えるヒント』(著:古荘純一/講談社)では、DCDという疾患がどんな症状を呈し、どんな生きづらさを伴っているのかを解説するとともに、実例を多くあげて本人・家族が抱える困難さの現状、支援方法やアドバイスを紹介している。 つい「苦手なことは練習を重ねて克服できるようにしてあげよう」と考えてしまいがちだが、脳の特性によってどんなに頑張ってもみんなと同じように動くのが難しい子がいること、他者と比べると深刻な2次障害が起こりうることを知るだけで救われる子がいる。
奇跡のフォント(著:高田裕美)
授業が始まり、教科書を開く。そこに書かれた文章を読む。何げない行為だと思うかもしれないが、ロービジョン(弱視)やディスレクシア(読み書き障害)など、文字や文章を「読む」ことに困難を抱えている子どももいる。 そういった子どもたちでも読みやすいようにと開発されたのが、「UDデジタル教科書体」だ。学校教育のために作られたこのフォントの生みの親が、書体デザイナーの高田裕美氏。 その著書、『奇跡のフォント 教科書が読めない子どもを知って―UDデジタル教科書体 開発物語』(著:高田裕美/時事通信社)は、読み書き障害でも読みやすいフォントが生まれるまでのノンフィクションになっている。 教育現場で大活躍しているフォントを作った書体デザイナーの物語。 多様性の時代における教育・ビジネスのヒントになる1冊ではないだろうか。