「横浜発の次世代技術」ペロブスカイト太陽電池 世界リードする戦略また一歩前進
薄くて軽く、曲げられる「ペロブスカイト太陽電池(PSC)」は、ノーベル賞の有力候補者とされる桐蔭横浜大(横浜市青葉区)の宮坂力特任教授(71)を生みの親とする「横浜発の次世代技術」だ。PSC開発に必要な技術は、日本が強みを持つ分野が多く、普及すれば、日本が世界市場をリードできる可能性があるとされる。今月、その実用化に向け、耐久性や最適な装着方法を3カ月かけて検証する実証実験が横浜港大さん橋で始まった。その取り組みと実用化への期待を探った。 【表で解説】ペロブスカイト太陽電池の利点と課題 ■室内光でも発電 クジラの背中をイメージしてデザインされた大さん橋の屋上。港を望む南東向きの壁面に、PSCのモジュールが張られている。宮坂氏は、散歩を楽しむ人など「大勢の目に触れることで、PSCへの世間の関心が広がれば」と11月12日の実験開始式で語った。 PSCは、原料の溶液を基盤に塗って作る薄膜の太陽電池。曇り空や室内の弱い光でも発電できる強みを持ち、2009年に技術が発表されて以来、各国で開発が進められている。 基盤にはガラスも使えるが、フィルムを用いれば薄く軽く柔軟で、取り付けやすくなる。従来の太陽光パネルでは難しかった壁面や柱などに張り付ける使い道の広がりに加え、「経年劣化や高性能品の登場に応じて簡単に交換できる」(宮坂氏)点も画期的だ。 ■量産化は目前 今回の実験を行っているのは、宮坂氏が代表を務める桐蔭横浜大発のベンチャー、ペクセル・テクノロジーズ(川崎市)▽半導体・IT関連商社のマクニカ(横浜市)▽包装材料などのメーカー、麗光(京都市)-の3社。環境省からの受託事業として、令和7年度まで実施する。 壁面に約30センチ四方のフィルム状のPSCを二百数十枚張り付け、製法の違いによる発電効率の差や、最適な取り付け方を検証。発電能力は「一般家庭の非常用電源」を想定した1~1・5キロワット時で、港湾施設での利用も念頭に、潮風による劣化の進み方も確かめる。 3社は紫外線や湿度などの環境が過酷なタイでも実証実験を進めており、2、3年後の製品化を目指す。マクニカの原一将社長は、量産化に向け「優れた先端技術を『みんなのもの』にしたい」と意気込む。