優秀なCBを輩出してきた川崎F U-18の新たな才能。DF藤田明日翔が「15歳のプレミアデビュー」で掴んだ自信と実感した課題
[9.15 プレミアリーグEAST第14節 前橋育英高 1-0 川崎F U-18 前橋育英高校高崎グラウンド] 【写真】ジダンとフィーゴに“削られる”日本人に再脚光「すげえ構図」「2人がかりで止めようとしてる」 ひとたびピッチに立ってしまえば、学年とか経験値は関係ない。相手が来れば、潰す。ボールが来れば、跳ね返す。もちろんゴールのチャンスが来れば、狙う。そこがどんなにレベルの高い舞台であっても、自分にできることを100パーセントで出し尽くすだけだ。 「今日はデビューだったんですけど、外で見るのと中でやるのは違って、相手も大きいですし、レベルも高いと感じましたけど、自分も通用するところがあると思ったので、そこを自信にして、次の試合に向けてもしっかり取り組んでいきたいです」。 タレント居並ぶ川崎フロンターレU-18(神奈川)に台頭してきた、弱冠15歳のセンターバック。DF藤田明日翔(1年=川崎フロンターレU-15生田出身)はプレミアリーグデビューのピッチで得た確かな自信と強烈に突き付けられた課題を、自分の中にしっかりと刻み込んでいる。 「林選手が代表に入ると聞いた時から出たいと思っていましたし、最初の方から出れない時期が続いていましたけど、その時からずっと出れる準備をしてきたので、あとは自分の良さを出してやるだけだと思っていました」。 先発起用を知った時のことを、藤田はそう語る。プレミアリーグEAST第14節。前橋育英高(群馬)と対峙する一戦には、ここまでリーグ戦全試合にスタメン出場を続けてきたセンターバックのDF林駿佑(2年)が年代別代表の選出を受けて欠場。その代役には期待の1年生が指名される。 チームを率いる長橋康弘監督も、その信頼をハッキリと口にする。「今までなかなか試合に関われなかったですけど、ここまで地道に努力してきた効果が最近は凄く出てきていて、スピードもあるし、当たり負けもしない、素晴らしい成長をしているかなというのは、私以外のスタッフからもそういう声が上がっていて、ここはチャンスだなというところで自信を持って、もう今の藤田明日翔なら十分やれるという気持ちで送り出しました」。29番という大きな番号を背負った藤田は、念願のプレミアデビューの舞台に解き放たれた。 「練習から明日翔とは何回もやっていて、対人も強いですし、足も速いですし、クレバーなので、そういうところを試合で出してくれというところで今日の試合に入りました」。川崎F U-18のキャプテンを務めるDF土屋櫂大(3年)が言及した通り、能力の高さはプレーの随所に滲む。前半からなかなかチームがリズムを掴み切れない中で、際どいピンチにもしっかり足を運んで対応。ペナルティエリア内から放たれた2度のシュートも、確実に身体を投げ出してブロックしてみせる。 物怖じせず、周囲の“先輩”たちにも的確に声を掛けていく。「声も出せるので、周りを動かす力もあって、自分が声を掛けられない範囲も明日翔が声を掛けてくれていましたね」(土屋)。さらにビルドアップにも落ち着いて参加し、左右にボールを振り分ける。その振る舞いからは、デビュー戦の空気感など微塵も感じられない。 ただ、このレベルは一瞬の隙を見逃してくれるほど甘くない。後半29分。1本のシンプルなフィードを蹴り込まれ、藤田は前橋育英のFWオノノジュ慶吏(3年)と1対1に。いったんはボールを奪いかけたものの、処理にもたついたところで入れ替わられると、そのままゴールを沈められてしまう。 終盤に喫した手痛い失点。それでも勝利を目指して、前を向くしかない。「自分のせいでああいう失点をしたので、自分が点を獲りに行くというか、『絶対に入れてやる』と、勝利まで行けるようにと思っていました」。だが、試合はそのままタイムアップ。プレミアデビューの90分間を、勝利で飾ることは叶わなかった。 試合を終えたばかりの藤田は、失点シーンについてこう振り返っている。「相手が結構身体のある選手で、チャレンジするのもいいんですけど、そこで入れ替わられたらああいう失点に繋がるので、そこは相手の長所を受け入れながら対処することで、問題なく対処できるかなと思うので、次に生かしたいと思います」。 反省するだけではなく、視線が次へと向いているあたりに、もともと持ち合わせているパーソナリティが垣間見える。「スピードの部分と、失点以外は身体の強さだったり、そういうところは通用したと思います。自信が付いたので、そこをどんどん伸ばしていきたいですし、修正点はまだいっぱいあるので、そこを修正していけば全然できるなと思いました」。高いレベルを体感したがゆえの向上心が、言葉の端々に滲むのも頼もしい。 長橋監督も藤田のパフォーマンスにはポジティブな印象を抱いたようだ。「彼は本当に初めての試合なのに頑張っていたなという印象があって、逆に彼を責めることはできないですし、凄くやってくれたかなって。たぶん彼の中であの失点は残ると思うんですけれども、この先の成長に繋げることが大事で、個人的には素晴らしい出来だったので、良かったかなと。もっともっと成長できると思うので、引き続き来週からまたやっていってほしいなと思っています」。 次節からのリーグ戦は林が復帰する一方で、大黒柱の土屋は『AFC U20アジアカップ中国2025予選』に臨むU-19日本代表の招集を受けたため、2試合を欠場することが決まっている。引き続き藤田にはスタメンのチャンスが巡ってくる可能性も低くはなさそうだが、本人はもっと先にある自身の未来像をまっすぐ見つめている。 「土屋選手がいないとか関係なく、自分がチームを勝たせるという想いでやっていきたいと思います。もう残りの試合は全勝してファイナルに行けるように、チームとして高い意識で日々の練習からやっていきたいですし、フォワードの恩田(裕太郎)選手たちとお互いに高め合っていくことで勝利に繋がると思うので、そこを頑張っていきたいと思います」。 自信は掴んだ。課題も実感した。そのすべては、明日の自分をより成長させていくための糧になる。15歳のプレミアリーグデビュー。優秀なセンターバックを輩出してきた川崎F U-18の新たな才能。藤田明日翔はその系譜に自身の名前を連ねるべく、これからも日常の努力を積み重ねていく。 (取材・文 土屋雅史)
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