井岡一翔ドーピング禁止薬物検出問題がJBC結論次第で泥沼訴訟合戦に発展する危険性も
倫理委員会では、井岡本人から事情を聞き、反論の場を設けた上で、ドーピング検査で禁止薬物が検出された問題についての結論を出し、それに従い、なんらかの処分を下すことになる。 井岡陣営からの異議申し立てがあった場合、B検体を再検査しなければならないが、JBCが3月初旬に警察に相談したことで、捜査令状を取られて冷蔵保存されていたB検体が押収されてしまったため、その手順を踏むことができなくなっている。つまり倫理委員会に専門家を招いても公式には“シロクロ“をつけることができない状況になっていて、もしドーピング違反が確定していない、A検体の検査結果だけで、井岡陣営が納得しない結論、処分を出した場合には、井岡陣営が、処分の撤回、違法性を訴えて法的手段に出ることは十分に考えられる。 すでに代理人弁護士は、今回の問題についての報道に関しても「井岡は、真実が報道されることについては異議を述べません。しかし、虚偽の 事実が報じられた場合には、然るべき法的措置を執ります」と明らかにしている。 警察に今回の案件を持ち込まれたことで、井岡陣営は、多大なイメージダウンの“被害“をこうむっており、JBCに対して名誉回復までを求める姿勢を固めている。 一方で、もしJBCが出した結論が、タイトル戦の対戦相手だった田中恒成陣営の畑中ジムが納得いかない処分内容であれば、当然、田中陣営も、処分の撤回を求めてアクションを起こす可能性がある。またタイトルを管理しているWBOに対してタイトル戦の無効性を訴える可能性もあるだろう。 ただ畑中清詞会長は、筆者の取材に対して「JBCがルールにのっとって粛々と審議を進めていくのを待つだけで、現時点ではWBOへなんらかの訴えをすることは考えていない」と明かした。しかし、これは、あくまでもJBCの結論が出ていない「現時点」での話。 ドーピング違反は確定していないが、A検体のドーピング検査で大麻を含む複数の禁止薬物が検出されたという事実は動かせない。 “JBCが手順を間違えなければ真相は明らかになったはず。禁止薬物を使った相手に負けた試合が有効か“との主張は、当然、出てくるだろう。現在は、SNSやネット上でも、井岡のドーピング疑惑の真偽を問う声ではなく、JBCの不手際、組織としての在り方を問題視する声の方が大きくなっている。本来、明らかにすべき問題の本質から大きく逸脱していることも確かだが、JBCのメディア対応の不味さが、その“世論“に拍車をかけてしまっているのが現実だ。5月にも、倫理委員会による、井岡本人の事情聴取が行われる方向だが、果たしてJBCはどういう結論を出すのか。JBCは混乱の一因を招いた自らの不手際を真摯に認めた上で、両陣営への”忖度“ではなくボクシングファンの信頼を裏切ることのない結論を出さねばならないだろう。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)