詩人・谷川俊太郎さん(92)死去 小川キャスターとの対談で語ったこと「いまはすごく言葉が氾濫するように…」“できるだけ少ない言葉”で紡いだ詩【news23】
■“言葉が溢れる現代”に信じた 谷川さんの「詩の力」 藤森祥平キャスター: 小学校の教科書を開いて暗唱した言葉が蘇ります。谷川さんは、なんでもかんでも2つに分けて考えるのは人間の頭脳の欠点だとおっしゃっていました。 小説家 真山仁さん: 私も小説を書いていて、おっしゃる通りだと思いますが、ただ、面白く書くには対立構図が大事なのです。対立構図を繰り返し作っていくことでエンジンが回っていく、例えば演劇も映画も同じだと思いますが、人間の頭がそうなっているからです。 今の時代、特に21世紀になってから善悪の区別がつかなくなったように感じます。「ハゲタカ」を書いていても「良い人」「悪い人」にしないといけないと思いながら書いていましたが、複雑になっていくと、読者がずっと不安定な中で読まないといけなくなってきます。今の社会もそうで、誰が本当に正しいのか分からなくなって、“正しい”ことを口にする人が胡散臭く感じてしまいます。 善と悪など「2つで考えてはいけない」はその通りですが、では、どうすればいいのでしょうか。 さらに多様性という視点もあって、多様性とはまさに2つで考えるのをやめましょうということですが、最初に対立構図をみて、「これじゃない」と思うところから始まるのかなと思います。善と悪を考えてもらい、「今の世の中そう単純じゃない」と気づかないと一足飛びでは難しいのかなと思います。 小川彩佳キャスター: 私たちの表現にも直結することですね。 藤森キャスター: 3年前のインタビューからも人柄が伝わってきますね。 小川キャスター: 谷川さんにお話を伺っているときに、脈絡のないタイミングで涙が流れてきたことがありました。そのときに谷川さんがポツリと「不思議ですよね、詩って、音楽もそうだけど、全然理由もなく胸がいっぱいになることがあるのね。喋っている言葉と違った次元に言葉が行くってことがあるんじゃないかな」とおっしゃいました。 谷川さんの詩というのは、まさにそうした明確な理由や説明を超えて心のひだに触れてくる瞬間があって、谷川さんの言葉の力を体感したできごとでした。 時代が移ろっても谷川さんの詩は、言葉のインフレの中で息苦しくなったときにゆっくり呼吸を整える場所、心の拠り所であり続けるのだなと感じます。 ========== <プロフィール> 真山仁さん 小説家 「ハゲタカ」「ロッキード」など 最新著書に「疑う力」
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