<男子フィギュア>高橋大輔はフリーで逆転は可能か
■不調の原因は足の故障 演技を終えた高橋は、しばらく口を開けたままだった。珍しい無表情。悔しさと思うように動かない右足への歯がゆさか。11月に右脛を痛めてGPファイナルを欠場。心配されていた不安はストレートに演技に出た。最初の4回転は、踏み切りに向かうスピードも高さもなく、両足着氷となってしまい、トリプルアクセルでは、着氷後に右足に力が入らなくなったように転倒した。最後のコンビネーションスピンでバランスを乱しレベルが下がったのも、その痛めた右足が原因だった。
3位の小塚に8.13ポイント差をつけられての4位。3度目のオリンピックを決める“最終選考会”に出遅れてしまった。 「なかなか自分の調子が上がらないので、逃げてしまいそうな自分を抑え気持ちを強く保つことだけを考えて過ごしているんですけれど……。その不安や緊張が出てしまった。悔しいというか自分自身に対して情けないですね」 ■本来なら棄権する状態だった インタビューでは《情けない》という言葉を何度も使った。元全日本4位でプロスケーターの経験もある今川知子さんは「ジャンプの踏み切りや着氷に躊躇が見えた。どこかで足が痛いので怖さが出たのでしょう」と故障の影響を指摘した。 現役時代は4回転ジャンプを武器に全日本2位に入るなど活躍、現在は指導者兼WEBサイト『アスリートジャーナル』で評論活動をしている中庭健介さんは、「想像していた以上に怪我の状態は悪いですね。大きく影響が出ています。今朝の練習では、ジャンプ練習はできていませんでしたし、本来ならば棄権するくらいの状態だとも聞きました。なのに演技構成も変えず4回転を入れてきました。逃げないという気持ちが見えました。怪我を抱えて、よくあそこまで滑ったとも言えます」と、高橋が、故障という、もうひとつの敵と戦っている状況を分析した。 では、この深刻な故障を抱えながら高橋のフリーでの逆転表彰台は可能なのだろうか? 羽生が、非公認ながら100点超えの世界最高得点をたたきだして、一人抜けた図式となったが、残り2つの表彰台を4回転、3回転のコンビジャンプを入れてくるなどの攻めの演技で2位につけた町田、3位の小塚、5位の織田で争うことになる。