<男子フィギュア>高橋大輔はフリーで逆転は可能か
■表彰台確保が五輪の”条件” オリンピック代表選手の選考方法として3人目の選手に関しては「(上位2人の)選考から漏れた選手と、全日本選手権終了時点でのワールド・ランキング日本人上位3名、ISUシーズンベストスコアの日本人上位3名選手の中から選考を行う」とされている。その基準に照らすと世界ランクと今季ベストで、羽生に次ぐ日本人2位に入っている高橋が有利なのだが、この全日本で表彰台を確保しておかねば、その後の選考に物議をかもし出すことにもなりかねない。なにより高橋本人が納得いかないだろう。 前述の中庭さんは「逆転は可能」という考えを述べた。 「3位の小塚選手とは約8点差ですが、フリーになると演技構成点の部分が倍になりますから、多くの修羅場を経験してきた高橋選手が、この部分で、しっかりと得点を上乗せすることは可能です。怪我で練習ができていないので滑走時間の長いフリーで、どれだけまとめることができるかは心配ですが、私は過去に“ここぞ”という場面で驚くほどの集中力を見せてきた高橋選手の演技を何度も見てきました。今日も、羽生選手が100点超えをした直後に高橋選手が登場すると、その余韻が消え、場内の雰囲気がぱっと変わりました。ファンの方々の“日本のエース”としての高橋選手への期待感を強く感じました。表彰台に上ることがベストですが、オリンピックまでは1か月半の時間がありますから故障も治癒するでしょう。私は2、3位に誰が入るかという状況次第では、高橋選手が例え表彰台に上がれなくとも国際舞台での実績や経験を考えて代表に選ばれてもおかしくないと考えています」
■五輪選考においては高橋が有利 今川さんも中庭さんと同じく「逆転は可能だと思う」という意見だ。 「この日も4回転のミスの後をうまくまとめておけば、もう少し得点を取れたと思う。一発勝負で勝つ根性を持っているのが高橋選手。フリーになると、さらに故障の影響は出るでしょうが、4回転以外のジャンプやステップやスピンでほとんどミスをせずに上手くまとめれば逆転は可能でしょう。小塚選手も故障が影響しているのか、今季はグランプリファイナルに進出できていないので、かなりの得点差で3位に入らねば代表に選ばれないというプレッシャーもあるでしょう。2位の町田選手から5位の織田選手にまで表彰台の可能性はありますが、五輪の代表選考においては高橋選手が有利だと思っています」と言う。 トリノ五輪で8位、バンクーバー五輪では、銅メダルを獲得するなど日本の男子フィギュア界を牽引してきた27歳は、それでも前を向いている。 「明日は気持ちでいくしかないと思うので、足がしんどかろうが痛かろうが、自分の気持ちはしっかり持って今日の悔しい気持ちを明日につなげていけたらなと思います」 決して逃げない。怪我を抱え出遅れた高橋は運命のフリーで果たしてどんな演技を見せるのか。 (取材協力/アスリートジャーナル)