「歌がその人を元気にすると信じている」 一青窈さん「デビュー前からチャリティーライブ活動」始めたきっかけと、これからの夢
――それもあって、チャリティライブはライブ(生演奏)にこだわっているんですね。 一青:それは、「あなたのために歌う1秒がある。それが、その人を元気にする」と信じているからです。生身の人間が目の前で命を燃やして歌うことで、そのエネルギーが聴く人に伝わり、それが「リハビリでこの指も動くようになったよ」とか、「手術を受けられるようになった」とか、につながるといいな、と。実際、そういう話を聞くこともあります。不思議ですよね。
大学時代のライブで得た感覚が忘れられないこともあります。当時、耳の聞こえない人たちに膨らませたコンドームを渡して、その振動で音楽を楽しんでもらったことがあって。そのとき、みんながリズムに合わせて、コンドームを振り回して足でバンバン音を鳴らしてくれたんです。このとき、「伝わった感覚」をつかみました。 ――まさに、そこが配信とは違う部分です。 一青:そこがYouTube配信とは全然違う。だから、コロナ感染拡大の「マスクして、人と人との間には距離を取って」という時期は、チャリティライブをやりませんでした。
■夢は病院に音楽堂を建てること ――夢は病院に音楽堂を建てることだそうですね。 一青:病院では大勢が入院しているので、「いまは音楽を聴きたくない」という人もいるはずです。いまの病院でのライブでは、プレイルームであっても、どうしても少しは音が漏れ聞こえしまう。迷惑はかけたくないです。 音楽堂があればそういうことがなくなりますし、そこへ行くことが生活での張り、日々の楽しみにもなります。音楽堂ができたら、私だけでなく、いろんなミュージシャンが時間のあるときに、気楽にチャリティライブができるようなシステムをつくりたいですね。
建物は、光と風が入れば最高です! 一青窈(ひとと・よう):歌手。台湾人の父と日本人の母の間に生まれ、幼少期を台北で過ごす。2002年「もらい泣き」でデビュー。翌年、同曲で日本レコード大賞最優秀新人賞、日本有線大賞最優秀新人賞など受賞、NHK紅白歌合戦出場。チャリティライブ活動で2023年日本財団HEROs AWARD 2023アーティスト部門受賞。
福原 麻希 :医療ジャーナリスト