【宝塚記念】7戦0勝、エアグルーヴ一族の“鬼門”…ローシャムパークが挑む「8度目の正直」
ルーラーシップやドゥラメンテでも2着止まり
長い競馬の歴史を振り返ると、必ずしも名牝=名繁殖牝馬とはなっていないが、この馬に関しては「超名牝にして超名繁殖牝馬」と断言していいだろう。1996年オークスで母ダイナカールとの母仔2代制覇を達成、1997年の天皇賞(秋)では2000m戦となって以降はじめての牝馬Vを成し遂げたエアグルーヴである。 【宝塚記念2024 推奨馬】勝率83.3%の必勝データに該当、能力No.1で突き抜ける! SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) 繁殖牝馬、一族の祖としても驚異的な成功を収めている。産駒のアドマイヤグルーヴが2003、2004年とエリザベス女王杯連覇を達成、ルーラーシップが2012年にクイーンエリザベスⅡ世カップを制するなど、母仔3代のGⅠ制覇を成し遂げたほか、フォゲッタブルやグルヴェイグも重賞勝利を挙げている。 さらに孫の世代からドゥラメンテ、ひ孫の世代からはジュンライトボルトと次々にGⅠウィナーを輩出。令和の日本競馬において、最大勢力と言っても過言ではない牝系となっている。 しかし、そんな名牝系にとって“鬼門”となっているのが宝塚記念だ。一族の成績を振り返ってみよう。 ▼ 「エアグルーヴ一族」と宝塚記念 ・1998年 3着 エアグルーヴ(3番人気) ・2005年 8着 アドマイヤグルーヴ(8番人気) ・2010年 10着 フォゲッタブル(6番人気) ・2011年 5着 ルーラーシップ(2番人気) 15着 フォゲッタブル(14番人気) ・2012年 2着 ルーラーシップ(2番人気) ・2016年 2着 ドゥラメンテ(1番人気) はじまりは1998年、エアグルーヴが牝馬として史上初となるファン投票1位で参戦。武豊騎手を確保して臨んだが、同騎手のもう1頭のお手馬であるサイレンススズカに逃げ切りを許し、3着に終わった。 2年連続で挑んだルーラーシップは2年連続で2番人気に推されるも、2011年は勝ち馬アーネストリーから0秒9差の5着、翌年はオルフェーヴルと0秒3差の2着。結果的に内回りの阪神2200mは合わない印象を受けた。 そして最も不運だったのが、2016年のドゥラメンテだ。単勝1.9倍の1番人気と支持を集めたが、マリアライトにクビ差及ばずの2着。レース後に歩様の乱れが見られたため検査をしたところ、左前脚の靭帯と腱の損傷が発覚。競走能力喪失の診断が下され、引退に追い込まれてしまった。 そのドゥラメンテを父に持つタイトルホルダーが一昨年、“エアグルーヴの血を引く馬”として初めて宝塚記念制覇を成し遂げたものの、“エアグルーヴ牝系”としては7度の挑戦で未勝利となっている。 一族の悲願をかけて、今年はエアグルーヴのひ孫にあたるローシャムパークが参戦する。 昨春のむらさき賞(3勝クラス)からGⅢ函館記念、GⅡオールカマーと3連勝で一気にスターダムを駆け上がった注目株。暮れの香港Cでは8着に敗れるも、今年初戦となった前走大阪杯ではベラジオオペラのクビ差2着と健闘。GⅠでも通用する実力を示した。 今回はキャリア初となる京都コースがカギとなるが、大トビの走法で広いコースに替わるのはプラスだろう。エアグルーヴの敗退から26年、自身初にして一族にとって9つ目のGⅠタイトルを届けることができるか。その走りに注目したい。 ライタープロフィール 逆瀬川龍之介 国内の主要セール、GⅠのパドックはもちろん、時には海外のセリにも足を運ぶ馬体至上主義のライター。その相馬眼を頼りにする厩舎関係者、馬主は少なくない。一方、マニアック、かつ実用的なデータを駆使して、ネット媒体や雑誌などにも寄稿するなど、マルチな才能を持っている。
逆瀬川龍之介