「最近の若者は・・・」過剰に一般化する人の深刻な盲点 都合よく情報を拾ってしまう「認知の偏り」の罠とは?
「視界には入っているのに見えていない」という状況は、誰しもが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。私たちの視点はつねに偏っていて、都合のいい情報だけを受け取ってそれが「すべて」だと思い込んでしまいます。 断片的な情報から過剰に一般化して決めつけてしまう認知の性質について、慶応義塾大学教授の今井むつみ氏が解説します。 ※本稿は今井氏の新著『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策』から一部抜粋・再構成したものです。
■人の目はカメラのレンズではない 私たちは、ただ「見る」「聞く」という動作においても、スキーマや思い込みの影響を受けています。視野に入っていることと、見ていることは違います。目の前にあるものが見えない。そんなことがあります。 私は以前、つるがオレンジ色のメガネをかけていました。あるとき、飛行機の中で、そのメガネをかけたまま寝てしまったことがありました。 いつの間にか落ちてしまったようで、目が覚めたときにはメガネはどこにもありませんでした。座席の周りにも落ちていなさそう。どうやらシートの隙間から、その下に入ってしまったようでした。
シートはボルトで固定されているため、自分では取り出すことはできません。結局到着してから現地のメカニックの人に来てもらい、シートの下から取り出してもらうことになりました。 メカニックの人に「どんなメガネ?」と聞かれたので、私は、「オレンジ色のフレームのメガネです」と答えました。 メカニックの人はシートを外し、懐中電灯を当てて探しています。5分くらい探した後に、「マダム、どうしてもありません」と言いました。でも、飛行機に乗るときには確かにかけていたわけですから、ないはずはありません。
「この座席の下ですよね」。メカニックの人は指さしながら、シートの下を見せてくれました。するとそこには、ちゃんと私のメガネがあったのです。 私が、「これです」と言って取り上げると、メカニックの人はあんぐり口を開けて、とても驚いた様子でした。彼は、ふざけていたわけでも、冗談を言っていたわけでもありません。ただ「見えていなかった」ようなのです。 ■「視野に入った=見えている」ではない 目の前にあり、視野にしっかり入っているのになぜ「見えていなかった」のか。