庭木から街路樹、山林まで…樹木を守るスペシャリスト「樹木医」の仕事とは[FRaU]
庭の植栽を管理することもあれば、大木を伐採することもある。はたまた森林整備や、宅地開発の造園を計画するのも仕事の一つ。気象や土壌など自然環境に関する幅広い知識を持って働く樹木医の仕事には、人と自然が共生するためのヒントがたくさんあった。
柔軟な思考を巡らせ木と人が共生できる世界を
樹木医として働く片岡日出美さんの本日の現場は、筑波山大御堂。樹齢300年という御神木の樹勢回復のため、樹上に登って診断したり、地上で指示をしたりと4人がかりで作業している。樹木医が高所での作業まで請け負うのは、実は珍しいことだそうだ。 「樹木医は、樹木を科学的知見から診断し、リスクを最小限に抑える対策を提案する仕事。土壌を改良することで不必要な伐採を避けられることもありますが、回復の難しい木や倒木の危険がある木は伐採します。そういった処置からその後の経過観察まで一貫して行える人は多くはないのですが、私たちの会社HARDWOODは、樹木医の専門知識だけでなく、長年の林業経験で培ってきた現場力を併せ持っているので、トータルで手がけられるのが強みなんです」
樹木の診断をするときはまず目で観察し、ときには木槌で叩いたり、専門の機械を使ったりして木の状態を検査する。合格率約20%という難易度の高いこの資格に片岡さんが挑んだのは、第三子の出産直後のことだった。 「大学の生物資源学類で日本林業の社会経済学を学び、国産材の流通を増やしたいという想いから、林業・住宅事業を手がける大手企業に就職しました。でも出産したり歳を重ねたりしたときへの不安があって。家庭を守りながら、ずっと働き続けるためにはどうしたらいいかと考えたら、手に職をつけるべきだと思ったんです。それで都内の樹木医専門の造園会社へ転職しました」 そこで6年の経験を積んだ後、林業仲間であり、樹木医としては同期となる森広志さんを始めとする仲間たちと、HARDWOODを立ち上げたのだ。 「近年は行政や企業から、森づくりの依頼も増えてきました。地域林政アドバイザーとして、放置林を常識にとらわれず、私たちの視点で利用法を考えたり、環境・防災・教育といった視点から混交林につくりかえたり。森林となると単木とはまた別の取り組み方にはなりますが、土壌や気候、樹種など、樹木医としての知見が役に立っています」