庭木から街路樹、山林まで…樹木を守るスペシャリスト「樹木医」の仕事とは[FRaU]
また、ロープを使って高木や巨木に登って伐採する「ロープワーク」の高い技術を持っているのもHARDWOODの特徴。クレーンやレッカーといった重機が入れないような急斜面や住宅地でも、安全に高木や巨木を伐採できる特殊伐採技術だ。 「ロープワークは、欧米で樹木のスペシャリストとして認知されているアーボリスト(樹護士)のテクニックです。こういう新しい技術を取り入れることで、林業×樹木医の仕事がより充実するようになりますし、作業量や質に見合う適正な収入を得られるようにもなる。今は採算性が悪いとされている林業の可能性が、ぐんと広がると感じています」
そもそも造園や林業は、男性主体の旧体制が残りがちな業界。片岡さんも、女性であることによって悔しい想いを何度もしてきた。 「責任者だと認識してもらえなかったり、チェーンソーのエンジンをかけるにもパワーが足りなかったり。男性より体力面で劣るのは事実で、現場は危険度が高いので荒い言葉をかけられることもあります。でも機械や道具は進化しているし、森林の測量や植生調査、作業計画の立案など、力がなくてもできる森の仕事もたくさんある。やり方次第で、老若男女かかわらず、活躍できると思います」
片岡さんたちが目指しているのは、すべての樹木に関わることができるプロ集団。 「樹木医は、人と植物をつなぐ仕事だと思っています。ご神木のような荘厳な巨木を支えられることも、何十年も先をイメージしながらの森づくりもやりがいがあります。私たちが働く姿を通じて、樹木医の価値や楽しさが多くの人に伝わり、関心をもってもらえたらうれしい。山林でも街中でも、樹木が人にもたらす影響や存在は尊いもの。樹木医として、樹木と人が共存する未来のために貢献していけたらいいなと思っています」 片岡日出美(かたおか・ひでみ) 筑波大学で日本林業の社会経済学を専攻し、卒業後は住友林業に就職。木材の流通業務に従事した後、都内の樹木医専門会社に転職。2020年4月HARDWOOD株式会社を立ち上げ、取締役に就任。2022年茨城県森林審議会委員、自然環境保全審議会委員に就任。現在、11歳、9歳、7歳の3児の母。 ●情報は、FRaU2024年8月号発売時点のものです。