参議院選挙の勝利と安倍内閣の今後の課題
【竹中治堅・政策研究大学院大学教授】 昨日行われた参議院選挙で自民党と公明党がそれぞれ65、11議席を獲得、大勝した。自民党は選挙区で岩手と沖縄以外、全候補者を当選させた。65議席は小泉首相への熱狂的な支持のもと自民党が勝利した2001年の64議席を上回る。 大勝の最大の要因は安倍首相の経済政策が支持されたということである。選挙前、6月下旬から7月上旬にかけて発表された朝日新聞、日本経済新聞、読売新聞の世論調査で、安倍内閣は50%台から60%台という高い支持率を獲得している(例えば『朝日新聞』7月9日、『日本経済新聞』6月24日、『読売新聞』7月1日)。一連の世論調査のほとんどで50%以上の回答者が安倍内閣の経済政策を支持している。首相は政権発足以来、最優先課題として景気回復に取り組む姿勢を示しており、これが評価されたということであろう。 なお、自民党は一時期改憲、特に憲法の改正手続きを定める96条を改正、改正要件を下げることを参院選の主な争点とする姿勢をしめした。しかし、安倍首相は参議院選挙の公示に際し、「今のままでは国民投票で否決される」と慎重姿勢に転じ、積極的に取り上げなかった(『産経新聞』7月5日)。 より重要性は低いものの、民主党が政権を担当していた時代に失った信頼を取り戻せなかったこと、維新とみんなの党は安倍内閣に対抗できる経済政策を打ち出せなかったことも自民党大勝の背景にはある。なお、野党が分裂したことはほとんど関係がない。野党が選挙協力により、自民党から議席を奪えた可能性のある選挙区は最大限見積もって東京、千葉、三重に三都県に過ぎない。 2007年7月の参議院選挙以来、鳩山内閣をのぞき、国会は「ねじれ」の状況にあった。この参院選以後、鳩山由紀夫首相以外、全ての首相が「ねじれ」国会に悩まされた。「ねじれ」国会の下、与野党は必要以上に対立し、政策決定過程は遅滞した。この状況は「きめられない政治」と揶揄されることにもなった。 自民党と公明党はあわせて135議席を確保することになり、「ねじれ」国会は解消する。安倍首相は野党の反対のために法案成立が難しくなる状況から解放される。