ビジネスをグッと動かすのは、トレンドより基本。ファミリーマートが変えたこと、変えなかったこと
あらゆる意思決定を「顧客視点」に変更
一方、変えたことは、内向きの商品・施策から「顧客視点」へと大きく舵を切ったことだ。社内意思を重視する傾向は「流通業あるある」だというが、ファミリーマートにおいても、その代表的なものが新商品の役員試食だった。残念ながら、役員は顧客ターゲットではない。であれば、時間をかけて役員の感想を聞くよりも、お客様に直接聞いて商品化を決めたほうが良い。そうして誕生した「ブラックサンダーフラッペ」はフラッペ史上ナンバーワン売上に、「ファミチキ × プリングルズ」も大ヒット企画になった。 加えて、主要商品の味の判断も、商品数が非常に多いこともあり、以前は商品部の内部関係者が新旧を比べて決めることもあったが、おいしさの判断にバイアスがかからないよう、商品部と協力して、お客様によるブラインド・テストでの意思決定に変更。おいしさが安定化したことは、前出のイメージスコアを見ても明らかだ。 「同じ施策をやってはいけない」という同社の暗黙の了解も、打ち破ってきた。「入社時に『同じ施策をやっちゃいけません、コンビニは新しいことをやるのが仕事なんだから』と言われたが、これは顧客視点であるといえない。これまでの経験から、同じキャンペーンを繰り返してもを売れると考えていたので、たとえば1月は『いちご狩り』、8月は『40%増量作戦』というように、季節の定番キャンペーンを始めた」。毎年同じ時期に実施することで、どんどん改善していけるため、売上も安定すると考えたからだ。 足立氏は、「顧客視点」を軸に、常識や前例に囚われない施策をほかにも打ち出した。たとえば、おむすびやサンドイッチ、弁当という「中食偏重」だった販促・コミュニケーション施策を、顧客視点で「多様化」した。コンビニに来る理由は食事だけではないので、たとえば、ちょっとおしゃれなTシャツやソックスなどがあれば来店確率が高まると考え、すでに商品開発が進んでいた「コンビニエンス ウェア」の訴求を強化した。 来店目的の拡大施策例(コンビニエンス ウェア) また、コーヒーカップを「メディア化」し、映画などとのコラボにより話題化する、などの工夫をした。 商品以外の「サービス」でも、公共料金などの支払い時にアプリを提示すると抽選で「宝塚歌劇にご招待」するというファンを惹きつける企画、そしてマルチコピー機でタレントやアニメ、ゲームなどのキャラクターのブロマイドやステッカーを販売する「ファミマプリント」も好調だ。「ファミマプリントは店舗オペレーションに関係なく、お客様自身がプリンターで出力するサービスで、デジタルだから在庫フリー。メジャーなアイドルだけでなく、地方競馬・競輪の騎手・選手のブロマイドなどのコンテンツでも売上を上げている」。 ファミリーマートに行かないと入手できないとなれば、熱心なファンはわざわざ足を運ぶ。ジャンプ漫画「呪術廻戦」、任天堂ゲーム「あつまれ どうぶつの森」とのコラボも実現させるなど、来店目的を拡大・多様化するための施策も年々充実してきている。