ヤギの次はゾウ! バンクシーが2連続の新作発表。壁画の意味についてさらに憶測広がる
8月5日、ロンドン南西部に架けられたキュー橋の近くに、崖に立つヤギの壁画を制作したとInstagramで発表したバンクシー。それから1日も経たないうちに、新たな壁画の存在を明らかにした。その場所は、ロンドンでメイフェアやベルグレイヴィアなどに次ぐ高級住宅街としても知られているチェルシー地区。ビルの側面にある2つの窓にゾウが描かれており、2頭はお互いに鼻を伸ばして別離を悲しんでいるようにも見える。 現在、立て続けに発表された2つの壁画でバンクシーは何を伝えようとしているかの憶測が飛び交っている。2回目のバンクシーの投稿には「部屋の中のゾウを無視して通り過ぎる人間......今のイギリスを完璧に表現している」「家族を大切にする事で有名なゾウが離れ離れになっている。親子間の断絶を表現しているのでは」「ほかの作品に比べてシンプルすぎる。まだ作品が続くのかも」など、さまざまな意見が寄せられた。 一方で、バンクシーがヤギの壁画を発表した15分後に現場に駆けつけたという熱烈ファンの美術教師、アンバー・ドフマンは、人間がいかに多くの動物の生息地を破壊しているかというメッセージだと考えている。彼女は地元紙ザ・サンに、「動物たちがどこで生活すればいいのかわからなくなるほど、私たちが環境を破壊してきたかを表現しているのだと思います。監視カメラは本来別の場所を向いていたのに、ヤギに向けられていましたよね。バンクシーは意図的にヤギに注意を向けさせたかったのではないでしょうか」と話した。 この2作品は、6月29日、イギリスの音楽フェス・グラストンベリー2024のライブ中にバンクシーが移民を乗せた膨張式の救命ボートを模した作品を投げ込んで以来となる。グラストンベリーでの作品については、7月1日、イギリスのニュース専門チャンネル、スカイニュースに出演したジェームズ・クレバリー英内務大臣が「下劣で容認できない」と激しく批判。それに対してバンクシーはInstagramで「(批判は)少し度を越えている」と反論し、続けて「私が出資している船、MVルイーズ・ミッシェル号は、7月1日の夜、地中海中部で17人の同伴者のいない子どもたちを救助した。だが、イタリア当局は罰として船を拘束した。私にはそれが下劣で受け入れがたいものに思える」と異例の長文コメントを寄せた。 今回、ロンドンの街中に2つのバンクシー作品が一気に出現したことになるが、作品の保護が喫緊の課題になりそうだ。2024年3月、ロンドン北部イズリントン地区にある建物の壁に高圧洗浄機らしきものを持った女性の姿と、緑の絵の具でスプレーされた葉のようなシルエットをバンクシーが描いたが、その後すぐ何者かが白ペンキで一部を塗りつぶしてしまった。それを受けて、建物の所有者がビニールシートを貼り付けた木の枠で作品を保護している。
ARTnews JAPAN