田名網敬一が新作の巨大インスタレーションを発表へ。世界初の大規模回顧展「田名網敬一 記憶の冒険」
今年の夏、もっとも注目すべき展覧会のひとつである「田名網敬一 記憶の冒険」(国立新美術館、8月7日~11月11日)。その内容が一部明らかにされた。 田名網は1936年東京生まれ。武蔵野美術大学卒業。在学中にデザイナーとしてキャリアをスタートさせ、75年には日本版月刊『PLAYBOY』の初代アートディレクターを務めるなど、雑誌や広告を主な舞台に日本のアンダーグラウンドなアートシーンを牽引してきた。いっぽうで、60年代よりデザイナーとして培った方法論・技術を駆使し、現在に至るまで絵画、コラージュ、立体作品、アニメーション、実験映像、インスタレーションなどを制作。アートディレクター、グラフィックデザイナー、映像作家など、そのジャンルを横断した類まれな創作活動により、他の追随を許さない地位を築いてきた存在だ。 本展は、そんな田名網の半世紀以上にわたる創作活動の全貌に迫る世界初の大規模個展となる。 本展のイントロダクションにあたる0章「生と俗の境界にある橋」で登場するのが、田名網にとって重要なモチーフである橋を使った新作インスタレーション《百橋図》だ。田名網はこれまで 葛飾北斎 の《諸国名橋奇覧》(1833-34)や、幼年時代の遊び場であった目黒雅叙園にあった太鼓橋の絵、日本映画や演劇に登場する橋などから、橋にまつわる不思議な逸話や歴史に関心を持っており、近年ははこうしたエピソードを背景に橋を主題とした作品制作に取り組んでいるという。 このの新作は、橋が幾重にも渦高く重なり合う、高さ約3.5メートルのインスタレーション。そこにプロジェクションマッピングで投影された田名網が描く奇妙な生き物たちが歩き回ることで、まるで異界への入口のような存在感を放つという。新作となる屏風型のコラージュ作品も共に展示され、田名網が想像する橋の向こうの世界が暗示される。「記憶の冒険」へと鑑賞者を誘うキーピースとなりそうだ。 なお、展覧会全体では初公開の最新作を含む約500点が出品。見応えのある展覧会となることが予想される。