2025年に仮想通貨はより信頼性の高い資産へ進化するか 激化する巨額ロビイング活動と技術革新 崔真淑
来年のマーケット予測が出始めました。そんな中で注目されるのが、「The Economist」が毎年発刊する「The World Ahead」シリーズです。珍しく日本に関する特集記事も記載されており、2025年に日本はインドに抜かれて、世界5位に転落するといった予測記事も。インドは経済成長が順調なだけでなく、中国の地政学リスクが高まることで、投資マネーなどの漁夫の利を得るといったことを示唆する内容でした。 一生お宝になるかも!?【大型の高配当株30銘柄】はこちら! 「The World Ahead」は中身だけでなく、表紙も注目されます。The World Ahead 2025の表紙は、円の強烈な下落を予想するような刺激的なイラストや、地政学リスクのさらなる高まりを予想するようなイラストも掲載されていました。結構な数の有識者が25年は「トランプ=ドル安志向=円高」といった予測を立てていることや、これまでの円安に動いた反動として円高が起こってもおかしくないだけに、少し違和感のある表紙でした。ただ、これはドルの基軸通貨としてのあり方など、既存通貨のあり方について問題提起をしているようにも見えました。今回は、そんな環境の中で、再注目されている仮想通貨の25年について考察します。 ■投資家心理を後押し まず、仮想通貨について考えなくてはいけない重要なイベントは、24年の米大統領選挙におけるドナルド・トランプ氏の当選です。投開票日当夜、ビットコインの価格はおよそ10%上昇し、11月13日には一時1ビットコイン=9万3000ドルを突破しました。この急騰は、トランプ氏による仮想通貨に対する規制緩和の期待が投資家心理を後押しした結果と考えられます。
なぜそのような期待が起きたのか? それは、トランプ氏が、ビットコインの規制緩和に批判的な態度をとってきたSEC(アメリカの金融庁にあたる組織)のゲーリー・ゲンスラー委員長を解任すると言ったからです。もちろん、大統領権限では難しいものの、大統領が代わるとSEC委員長も辞任するというのが通例であることから、その蓋然性は非常に高いでしょう(*1)。 そして、25年に向け、仮想通貨市場は上記のような規制緩和への期待だけでなく、ロビイング活動の激化と技術革新で、さらに伸びるとも期待されています。 ■有利なルール作り まず、ロビイング活動の規模について具体的な数字を見てみましょう。21年の米国では、仮想通貨企業が上院に対して約500万ドルを費やしました。このうち、7月から9月の3カ月間だけで250万ドルを投じ、前年同期比で4倍の増加となっています。さらに、ロビイング活動に従事するスタッフ数も16年の1人から21年には86人に急増しました。主要企業では、Coinbaseが21年第3四半期に62万5000ドルを、Blockが20年4月以降に170万ドル以上をロビイング活動に投入していると報道されています。EUでも同様に、ブリュッセルに52人のロビイストを配置するなど、国際的な動きも活発化しています。この巨額な投資は、規制当局への影響力を強化し、仮想通貨に有利なルール作りを目指す戦略の一環です(*2)。