オバケ調査で不安解消 事故物件に悩む不動産オーナー増加
ほとんど誰も知らないお仕事、知っていても中身がよく分からないお仕事を紹介する新コラム「ニッポンのお仕事」。初回に取り上げる仕事人は、不動産業界歴17年の児玉和俊氏である。彼の仕事から、孤独死が増えている日本の悲しい現状が浮き彫りになる――。 【関連画像】各種機材の設置例(写真=児玉和俊氏提供) 東京都心の賃貸マンションで入居者の男性が死亡しているのが見つかった。オーナーは部屋をきれいに清掃し、再び貸し出すも、短期間に入居者が2人立て続けに退去した。理由はどちらも、「誰もいないはずの部屋で、人の気配を感じる」という不可解なものであった。オーナーは、不動産コンサルティング業を手掛けるカチモード(東京・新宿)の児玉社長に連絡し、「オバケ調査」を依頼した。 後日、児玉氏は部屋にサーマルカメラやビデオカメラ、録音機、電磁波測定器、温湿度計などの機材を持ち込み、調査に着手した。 後ろに気配を感じたのは、深夜1人で各種計測器の数値をメモしていた時のことだった。視線を向けると……。 ●東京23区では年6000人超が孤独死 カチモードのオバケ調査をはじめ、特殊清掃業や転売業、保険業など、事故物件関連のビジネスが勃興している。 事故物件とは、殺人や自殺など、通常ではない理由で人が死亡した不動産物件のこと。その中でも現在増えているのが、入居者が孤独死した事故物件だ。 東京23区では2020年に自宅で孤独死した人が6096人に上った(単身世帯で感染病・中毒・原因不明など「不自然」な形で孤独死した人数)。東京都監察医務院が集計しており、03年と比べて2.1倍に増えた。高齢化が背景にあり、官民による高齢者の孤立防止策が追いついていない。 もっとも孤独死しただけでは、ただちに事故物件にはならない。長い間誰にも発見されずに部屋が汚れ、消臭・消毒・害虫駆除などの特殊清掃や、リフォームが必要になった場合に、その物件は制度的に借り手への告知が必要な事故物件となる。室内の気温や湿度によっては死後わずか数日で特殊清掃が必要になることもある。 遺体の発見が遅れた人数を推測する上で参考になるのが、警察庁が24年に入ってから集計を始めた孤独死の数だ。自宅で死後数日以上たってから見つかるなどして、警察が遺体を取り扱った人数を集計しており、1~3月に全国で2万1716人となった。単純に4倍すると、年間8万6800人のペースになる。 家族や隣人とのつながりも希薄化が進んでおり、賃貸物件のオーナーにとっては、事故物件化するリスクが高まるばかりだ。