オバケ調査で不安解消 事故物件に悩む不動産オーナー増加
各種機材に変則的な動きがなく、児玉氏の身も無事ならば「異常なし」と記した証明書と、調査報告書をオーナーに提出する。さらに「異常なし」と判定したのに、入居後に不可解な現象が起きれば、その内容に応じてカチモードから入居者に10万~100万円の「懸賞金」を支払う制度を設けた。 オーナーは、カチモードから「異常なし」とのお墨付きを得ていることと、万が一の時には懸賞金制度が利用できることを訴求して、入居者を募集する。これにより事故物件であっても、通常の家賃で部屋を貸せるようにする。 また調査で、不可解な現象が起きていることが確認できた場合には、10~100万円の懸賞金をオーナーに進呈する。その上、カチモードが通常の家賃で部屋を借り上げる。 カチモードは借りた事故物件にビデオカメラを設置し、リアルタイムで室内の様子をネット配信したり、事故物件に関心がある人を部屋に招いたり、カチモードの事務所として利用したりする。児玉氏は「借りた事故物件は、会社の話題づくりに活用したい」と言う。 調査の結果がどうあろうと、オーナーにとっては通常の家賃で部屋を貸せるメリットがある。カチモードの社名には事故物件の「価値を戻す」という意味が込められている。 児玉氏はオーナーのために身をていして、今夜もどこかの事故物件でオバケ調査に臨んでいる――。 ●偶然の一致か、それとも… 「ご苦労さま」。朝を迎え、児玉氏がオバケ調査を終えた事故物件にオーナーが訪ねてきた。 「児玉さん、何か感じた?」 「感じました。計測器の数値をメモしていた時、後ろに気配がして、振り向いたんだけど誰もいなくて」 「やっぱりね」 実はオーナー自身も以前、室内で何かの存在を感じたことがあったという。児玉氏は「答え合わせしましょう」と言って、オーナーと怪しげな気配のした場所を同時に指さすことにした。 「いっせえのせ」。2人はベランダに面した部屋の一角を一斉にさし、顔を見合わせた。 どう捉えるかは読者の自由である。なお、児玉氏は「異常あり」との結論を下した。
吉野 次郎