子どもが奨学金を借りることは「親として恥ずかしい」?…結婚を決めた相手の両親に、自身の親をけなされた女性が「破談を決意した理由」
奨学金はすぐに完済するべきか
「彼は『くだらないこと言うなよ』と抗議してくれましたが、彼の両親は『アンタは黙っていなさい。これは家の問題なんだから』と相手にしませんでした。その日の帰り際に『ふたりともわかったわね?』と念を押すなど、取りつくシマがまるでない状態でした」 清香さんは奨学金を利用したことで大学にも入学し、世界進出している大手IT会社に入社している。奨学金も無理なく返済を続けられる状況である。それなのに彼の両親は奨学金という言葉に過剰反応を示したというわけだ。 いずれにしても、「本来ならば、式の日取りや場所、結婚後の生活についての話も進めるつもりだった」というが、それどころではなくなったという。 「振り出しに戻ったどころか、スタート地点にも立てない状況になってしまい、私も彼も頭を抱えてしまいました。奨学金のことは以前から彼に伝えていたし、万が一、育児で私が返せなくなった場合、彼が代わりに返済するということで話はまとまっていたのですが、彼の両親のあまりの口ぶりに彼も動揺してしまった」 思いがけない形で出鼻をくじかれ、意気消沈するふたり――。この膠着状態を打破するには、「結婚前に奨学金を完済するしかない」という結論に達したというが、それは清香さんにとって容易なことではなかった。 「彼は『ご両親に相談してみたら?』と言いましたが、そんなことをしたら、両親は無理してでもお金を作るに違いありません。でも、経済的に余裕がない両親の負担を減らし、将来良い会社に入って親孝行したいと考え、奨学金を受けて進学することを決めたのは私です。今さら、親に金を出してくれなんて口が裂けても言えません」
両親を馬鹿にされた女性がとった行動
ほんの少し前まで、幸せを嚙みしめていたはずが、一気に奈落の底に落とされた形になってしまった清香さん。その苦悩を知ってか知らずか、彼は「じゃあ、どうするの?このままじゃ結婚できないよ?それでいいの?」と畳みかけてきたというが、これはいい悪いの問題ではない。清香さんの生き方やポリシーに関わる問題である。 「結局彼とはお別れすることにしました。借金が返せない以上、彼と結婚する資格は私にはありません。それに親孝行をしたくて自分で選択した人生に後悔したくなかったし、そういう考えのご両親がいる人のところに嫁いでも幸せになれそうにないから、『結婚する前に破談になって良かった』と思うようにしています」 価値観の相違は不幸の元。清香さんの判断は賢明であろう。 【つづきを読む】「「あなた、パパの子どもを産んでくれない?」…母親に頼まれ、17歳の時に「実の父親」の子供を出産した女性が訴える「絶望の日々」」
清水 芽々(ノンフィクションライター)