「南海トラフ巨大地震」原作者biki「巨大地震は30年以内に70~80パーセントの確率で起きる」
30年以内に70~80パーセントと、非常に高い確率で発生が予測されている「南海トラフ巨大地震」。発生すれば、西日本全域を巻き込む超巨大災害になる可能性があるとされ、被害予測は、東日本大震災(2011年)の約10倍ともいわれている。 【動画】医療、航空、司法、自衛隊、不動産…「やりすぎ都市伝説」 そんな「いつか起こる震災のリアル」を綿密な取材に基づいて描いた漫画「南海トラフ巨大地震」(著:よしづき くみち 原作:biki 講談社)が話題だ。 未曽有の国難――。その時、一体何が起きるのか? どうすれば、生き延びることができるのか? 原作者のbikiさんに聞いた。
“災害下におけるリアル”を描きたい
――去年8月に第1巻が発売され、即重版が決まるなど、話題の漫画「南海トラフ巨大地震」。まずは、企画の成り立ちからお聞かせください。 「今年8月にも日向灘でマグニチュード7.1の地震が発生するなど、ここ数年、南海トラフ巨大地震への関心が高まっています。『現代ビジネス』さんから、地震や災害の脅威を漫画としてより多くの方に読んでいただいきたいというお話があり、原作を引き受けました。 私の父は航空自衛隊に所属していた元自衛官で、東日本大震災の際、人命救助やヘリコプターでの輸送業務に携わっていたことも大きく影響しています。漫画原作という仕事に関わっているからには、いつか地震・災害の脅威を描きたい、作品化したいという思いがあり、今回のお話をいただいたので、広く読まれる有意義な作品にしようと決意しました」 ――本作の舞台は、愛知県名古屋市。2025年2月11日15時07分、マグニチュード9.2、最大震度7の南海トラフ巨大地震が発生。その時、名古屋港にいた主人公・西藤命が、変わり果てた街の姿を目にするところから物語が始まります。 「名古屋という舞台設定は、編集部と企画をすり合わせる中で決まりました。例えば大阪府を舞台にすると、関東で暮らす方がどこか他人事になってしまう場合もありますし、その逆もあるため、日本のほぼ中央に位置する名古屋になった経緯があります。 かつて私は石油関係の会社で勤務していましたが、出張で名古屋港に足を運んでいたこともあり、なじみのある土地でもありました。東日本大震災の際、名古屋港で湾岸のガスコンビナートが炎上する映像を思い返して、“巨大地震が起きた時、ここはどうなるんだろう?”と考えたこともありました」 ――名古屋は、より多くの読者に関心を持ってもらうための設定だったんですね。 「主人公以外のメインキャラクターが埼玉県(元陸上自衛隊員でプラントエンジニアの朝霞剛太郎)や福岡県(大手食品メーカー勤務の許斐結衣)出身であることも同じ理由です。若い世代により興味を持ってもらいたかったので、主人公を含む3人はすべて20代(25~29歳)に設定しました。 ヒロインの結衣をメインの1人に据えたのは、避難時に起こる女性ならではのトラブルや悩みを描きたいと考えたからです。女性以外にも、例えば避難所で若くて健康な男性が、均等に配られる食料に手を付けることに引け目を感じる…元気なんだから、若いんだからという目線を高齢者から向けられて、逆に若者が弱者化してしまうケースもあったそうなので、今後もそうした災害下のリアルを描いていきたいです」