「まだ子供でいようかな、でいい」ドラァグクイーン ナジャ・グランディーバが18歳新成人に伝えたいこと
成人を迎えても「全部自分の責任になる不安」は考えなくていい
――18歳で成人になることについてどう思いますか。 ナジャ: 18歳で大人たちに「はいあなた大人です!」と言われて不安に感じることといったら、全部自分の責任になる、というところがまずあると思うんですよ。みんな自分で決めてやっていかなあかん、それやっていけるのかなっていう不安ですけど、多分そこを根本考えなくていいと思うんですよ。 大人=自分で決めるって思いがちだけど、逆に大人だからこそ、いろんな人の話を聞いて、何でも相談していけばいいんじゃないかなと思います。 大人の仲間入りをしても、その中では一番若いわけだし、大人の世界ではもっとたくさんの大人がいっぱい居るんですよ。そこで妙にカッコつけすぎるより「この子まだまだだな」っと思われる方が助けてもらえそうな気もしますし、ちょっと弱みを見せたほうが得すると思う。 私の場合は割とベテランさんに可愛がってもらえるタイプでしたが、それはたぶん自分の弱みみたいなものを先輩にさらけ出して、悩みや恋愛相談を割と全部隠さずに話していたからかもしれません。
18歳で新成人となる方々へ「6割で生きていい」
――ナジャさんが18歳で成人になる方々に一番伝えたいことは。 ナジャ: 「頑張りなさいよ」っていうよりは「頑張り過ぎなくていいですよ」というのを言いたいかな。100パーセントじゃなくて、ほんまに6割ぐらいで生きていく方が楽じゃないですか? それでいいと思いますよ。 18歳で世間的には大人だけど、「僕まだ子供でいようかな」って思う人は子供でいればいいと思うんです。「大人として振る舞っていこう」って決めた人は努力して大人として生きてもいいとは思うけど、だからといって、そこで一人でかっこつけてもたぶん失敗するから、甘えられる人には甘えて、相談しながらでいいと思うんです。 ――それはナジャさんの経験から得た教訓みたいなものですか。 ナジャ: 20歳で成人した当時、働いていたお店に私の他にスタッフが2人いて、1人目はいわゆるすごい男前で、お客さんがついていた。だから見た目ではもうこの人にはかなわない。2人目はすごいお酒が飲める人で、お酒をたくさん飲むとボトルが空くから、ママが喜ぶ。 私はそんなに飲まれへんし、男前でもないけれど、ベチャベチャ喋るのが得意やったから、喋りながらずっとお客さんが心地よくいてくれる、というのを担当にしていました。 なんかスタッフのことをライバル視したことがあんまりないかもしれない。そこはそんな対抗をせずに、私のできることをやればいいかなって思っていました。もともと頑張りすぎるのがあんまり好きじゃないから「私はこれができるな」「じゃあそれを6割ぐらいで長くやっていこう」という考え方だったと思う。張り合っていたら疲れ切って辞めていたかもしれないし、アクセル100パーセント踏んでるってしんどくないですか? っていう。 だからずっと6割ぐらいでやってる方が、結局なんか長く続くのかなって思いますね。 ――ナジャさんにとって“大人になる”とはどういうことですか。 ナジャ: 難しいね。大人になるってどういうことなのかな。 そもそも20歳になって、大人になったって思ったことなかったと思うな。そこの境界線は自分の中でなんにも切り替えがなかったし、そこまで意識もしてなかったかも。 でも言えるとしたら、この先、年を取ってきて、ある時“子どもになりたいな”と思う時が来たら、その時が“あなたは大人になった証拠です”ということかも。その時、大人になっているんだと思いますね。 ----------- ナジャ・グランディーバ タレント・ドラァグクイーン 兵庫県出身。マツコ・デラックスやミッツ・マングローブのお仲間として、彗星のごとく現れた大阪在住のドラァグクイーンタレントのひとり。毒舌を言わない「のんびりオネエ」として関西を中心に、切れのいい軽快なトークでテレビやラジオ、他多数のメディアで活躍。今年の3月に初のエッセイ本『毎日ザレゴト 人と比べて生きるには人生は短すぎるのよ』(大和書房)を発売。