「ママ友と離れるとホッとする」その関係は問題あり!コミュニケーションのエラーに気づくには
「観察」と「ノンジャッジメンタル」から関係性が始まる
――他者とよい関係を築いていくには、相手についての理解も必要だと思います。そのためのポイントはありますか。 下向「相手を理解するためには、“観察”と“ノンジャッジメンタル”が必要だと考えています。その人がどういう発言をしていたか、どういう行動をとっていたかを観察して、点と点を結んで“こんなことに悩んでいるのかな”“これを大切にしている人なのかな”といった見立てをします。また、観察だけでなく、率直に本人に聞くことも大事です。 とはいえ、その人と過ごすのはほんの一瞬です。懸命に観察したとしても、本人の一部分しか見えていない。そのため、私が“こんな人だろうな”と感じたとしても、それはただの思い込みで、全く異なるリアリティを持っているかもしれないんです。 たとえば、前回会った時の印象と全く違っていたり、“あの人、すごく自己主張がはげしくてワガママなんだよね”と噂で聞いていたのに、実際に会って話してみると“すごく相手に気を使える人だな”と思ったりすることがあります。だから、自分の思い込みは一旦脇に置いて、ノンジャッジメンタルで向き合ってみることで相手の理解を深めることができます」 岩田「現代人は思考優位になりすぎているんですよね。最近、もっと感覚優位に戻っていくことが重要なのではないかと思うんです。先ほどの下向さんの話でいうと、“誰かがこう言っていた”ということではなく、自分がその人と接してどう感じたかを大事にする。自分の感覚を優先する。 “こういう人なんだな”と自分の感覚を大事にしながら、個々の違いを受け止めていけるといいですよね」 下向「それぞれの違いには“良い・悪い”はなく、“この人には、こういう特性があるんだ”ということを理解していけるといいですよね。 それを体感するために、中高生と『グラデーションマッピング』というワークをすることがあります。特に10代の頃は発達段階的に、自分と違う感覚や特性を持つ人を警戒する傾向があります。“キモい”と言ったり排除したりしようとするジャッジメントが生まれやすいのです。『グラデーションマッピング』はそうしたジャッジメントを解くワークですが、職場やママ友同士など複数人で実践してもおもしろいと思います。 『グラデーションマッピング』は、右端が“全く問題なし!(完全にイエス!)”、左端が“絶対に無理!(完全にNG!)”として、提示されたお題に対して、自分が当てはまる位置に動きます。“グラデーション”なので、「どちらともいえる」と思えば真ん中に立ち、“どちらかといえばイエスかな?”と感じれば右側寄りに立ちます。 たとえば、最初はライトなお題で、“バスタオルを2日以上使うかどうか”などはおもしろいかもしれません。右側には“毎日洗う意味がわからない!”という人が立ち、左側には“絶対に毎日洗う!”という人が立つ。“あまり気にしたことなかったなぁ”という中間タイプもいるでしょう」 岩田「2日以上は余裕。でも、ママ友同士で行ってみると、みんなが周りを気にして“毎日洗う”に行きそう(笑)」 下向「私が進行をするのであれば、『“こういうふうに見られたい”という位置に立ってください』というお題も挟むかもしれませんね。それを受け止めた上で、“実際はどうか”で並び直してもらう。見られたい自分がいることは決して恥ずかしいことではないというノンジャッジメンタルを体感できる機会にも繋がるはずです」 岩田「“自分と他者が異なる存在なのだ”ということが目に見えてわかりますね。私は社会で幸せに生きていくためには、“自分の感情をどう扱うか”や“他人とどう関係性を築いていくか”が大事だと感じていて。そのためにはIQよりも、心の知能指数ともいわれるEQが欠かせないと思ってきたんです。IQが全くいらないというわけではないですが、それが幸せに直結するかというと、そこには疑問を抱いていました。SELは私の考えてきたことが体系化されていて、興味深かったです」 下向「SELはこれまで身近にあったアプローチなどを束ねて、名前を付けて、背景を整理したものともいえます。岩田さんのご経験や内省の中から見出してきた取り組みとリンクすることができ、非常におもしろかったです」 誰もが抱えている人間関係の悩み。そこに蓋をするのではなく、まずは自身の感情に気づき、心地よい関係性へと進んでいく一歩を踏み出してみませんか。その中で、ぜひ今回ご紹介したアプローチを試してみてください。