相続税対策として、孫に「毎年100万円ずつ」生前贈与しています。110万円までは「非課税」で贈与できると聞いたので、税金を取られることはないですよね?
生前贈与における注意点とリスク
しかし、生前贈与を行う際は注意点もあります。次のようなケースは生前贈与とみなされず、孫への贈与であっても、相続財産として扱われたり、加算税の対象となってしまったりする可能性があります。 ●名義預金とみなされる場合 ●定期贈与とみなされる場合 ●贈与と認められない場合 贈与とみなされない可能性について、1つずつ詳しくみていきましょう。 ■名義預金とみなされる場合 祖父母が孫の預金通帳を作成し、毎年100万円ずつ振り込んで後から渡すという贈与の方法をとるケースがよくみられます。贈与では、あげる人ともらう人双方の同意が必要となるため、孫が知らないまま振り込まれているお金は贈与とみなされません。 この場合は、口座が孫名義でも祖父母自身の預金(名義預金)とみなされてしまいます。贈与ではないと判断されると、贈与していた資金が相続財産として再計算されることになり、加算税の対象となる可能性があります。 ■定期贈与とみなされる場合 暦年贈与として生前贈与を行うときは、毎回贈与契約を結んでお金を渡す必要があります。毎年、同日に同じ金額が孫の口座へ送金されるなど、機械的な贈与の場合は、定期贈与とみなされる可能性が高いでしょう。 定期贈与と暦年贈与はお金の流れは同じですが、税法上は異なります。例えば100万円を5年間にわたって贈与する場合、暦年贈与であれば非課税で行えます。一方、あらかじめ500万円と総額を決めて、5年間に分けて贈与するという考え方が定期贈与です。この場合は、暦年贈与ではないので、110万円までの控除が使用できず、贈与税を支払う必要があります。 ■贈与と認められない場合 贈与では、あげる人ともらう人が承諾していれば口頭の約束でも成り立ちます。しかし、暦年贈与である証拠の書類として、贈与契約書を毎年作成しておくと安心です。 万一、税務署の調査が行われたときには、贈与の事実を証明する書類として贈与契約書が役立ちます。贈与が事実であっても、贈与契約書がないために贈与を否認されると、追徴課税となる可能性があります。
まとめ
孫への生前贈与は、将来的な相続税の節税のためだけでなく、大切な孫への愛情の形でもあります。しかし方法を間違えると、相続が発生したときに税務署の調査が行われたり、相続税が増え加算税まで求められたりする可能性があるため注意が必要です。名義預金や定期贈与などとみなされないよう、適切な方法で孫への贈与が進められるといいですね。 出典 国税庁 財産をもらったとき 国税庁 令和6年分の贈与から贈与税・相続税の計算方法が変わります! 国税庁 No.4157 相続税額の2割加算 国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合 執筆者:古澤綾 FP2級
ファイナンシャルフィールド編集部