中日のドラ1小笠原は、甲子園優勝投手は成功せずのジンクスを破れるか?
プロ野球ファンに広く知られているジンクスがある。夏の甲子園優勝投手は成功せず……のジンクスだ。 近年は、2012年に大阪桐蔭のエースとして春夏制覇した阪神の藤浪晋太郎(22)が3年連続2桁勝利をマーク、2013年の前橋育英の優勝投手、高橋光成(19)が西武のローテーションに入るなどそのジンクスを打ち破りつつあるが、小笠原も含めて過去68人いた優勝投手のうち、プロ野球の世界に入ったのが34人。そのうち、柴田勲(法政二高から巨人)や、金村義明(報徳学園から近鉄)、愛甲猛(横浜高からロッテ)、最近では、広島の堂林翔太(中京大中京から広島)ら8人が野手に転向。純粋な投手は24人だが、日米も含め通算100勝以上をマークした優勝経験投手は、尾崎行雄(浪商高から東映)、桑田真澄(PL学園から巨人)、野村弘樹(PL学園から大洋)、松坂大輔(横浜高から西武)、田中将大(駒大付苫小牧から楽天)の5人しかいない。 5人もいると言った方がいいのかもしれないが、元ヤクルトのスカウト部長だった片岡宏雄氏は、「甲子園で優勝するためには、ある程度、ピッチャーとして出来上がっていなければならないので、小さくまとまりすぎて、プロでの伸びシロが少ない。肩、肘を消耗して、体力、気力ともに燃え尽きる選手が少なくない。松坂のように、そのままプロで通用する逸材もいるが」と、優勝投手がプロで大成功する確率が、そう高くない理由を説明した。 そのジンクスへの挑戦をスタートし始めたのが、昨夏の甲子園で東海大相模のエースとして深紅の優勝旗を手にした中日のドラフト1位、小笠原慎之介(18)である。5月31日、ヤフオクドームで行われた交流戦開幕のソフトバンク戦にプロ初登板、初先発、5回を投げて7四球と荒れたが、重いストレートの球威とチェンジアップのコンビネーションが冴えて1安打4奪三振無失点でデビュー戦をまとめた。4番手の福谷が8回二死から6連打を浴びて、中日ではあの近藤真市氏の巨人戦ノーヒットノーランデビュー以来、29年ぶりとなる高卒ルーキーの初先発初勝利の記録は逃してしまったが、評価は急上昇。 試合後、本人は「緊張しました。四球が7つとは中継ぎが投げ辛い状況を作ってしまいました。もっと減らさないと」と反省したが、谷繁監督は合格点を与えた。 「何年もこの世界にいるような堂々と投げた。次も考えたい」 もう一度、先発チャンスを与える考えを示唆した。