米で「逆イールド」発生 景気は将来的に後退するのか?
「リーマンショック」以来の将来的な景気後退の予兆なのか――。アメリカで「逆イールド」と呼ばれる現象が発生し、市場関係者の間で懸念が出ています。逆イールドがなぜ発生し、なぜ景気後退の予兆といわれるのか。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストが解説します。 【画像】米国株急落 「逆イールド」発生で景気後退懸念が現実味?(2018年12月)
「2年物」と「10年物」で発生した理由は?
8月14日の米国市場ではNYダウが800ドル超(3%程度)下落しました。引き金となったのは「米国債の長短金利逆転」です。通常、金利は満期までの期間が長いほど高くなるのですが、そうしたセオリーに反して、14日は2年金利が10年金利を上回る逆転現象が発生しました。これは逆イールドと呼ばれ、「景気後退の予兆」として広く認識されています。前回、逆イールドが発生したのは2007年で、その翌年にリーマンショックが起きました。14日の株式市場参加者は、この「凶兆」をみて景気に強気なポジションを解消、すなわち株式を売却したと推測されます。 今回、逆イールドが発生したのは2年金利と10年金利です。ここで2年金利と10年金利について簡単に解説を加えましょう。まず、2年金利は市場参加者の政策金利見通しを素直に反映する特徴があります。FRBが政策金利を引き下げると予想される場合に2年金利は低下します。したがって、現在の2年金利が年初の2.5%から大幅に低下し1.5%付近で推移しているのは、FRBの利下げ予想が支配的になっているため、と理解できます。実際、FRBは約10年半ぶりの利下げを決定した7月に続き、更なる利下げを実施すると予想されています(筆者もそう予想しています)。 他方、10年金利はより複雑な要因で決まります。政策金利の予想に加えて、中長期的な景気・物価動向などさまざまなファクターが加味されます。したがって、何らかの理由で将来の景気後退懸念が喚起された場合、政策金利の引き下げ予想と景気後退懸念が相まって、10年金利は(2年金利に比べて)大きく低下する傾向があります(例外多数)。 今回、2年金利と10年金利で逆イールドが発生したのは、FRBの利下げ(予想)を受けて2年金利が低下傾向にある中で、将来の景気後退への懸念が膨らみ、それ以上に10年金利が低下した、という文脈で説明可能でしょう。