米で「逆イールド」発生 景気は将来的に後退するのか?
なぜ「景気後退の予兆」といわれるのか?
ところで、なぜ逆イールドは景気後退の予兆と認識されているのでしょう。一つは、過去の景気後退局面で、その1~2年前に逆イールドが発生していたからです。市場参加者がこうした経験則を強く意識していることに疑いの余地はありません。そしてもう一つは、長短金利差の縮小(逆転)によって、銀行が貸出利ザヤを確保しにくくなると銀行が貸出に消極的になり、企業倒産と失業が増えるためです。伝統的な銀行のビジネスモデルを念頭に置いた場合、短期金利(≒預金預金、調達金利)が長期金利(≒貸出金利)よりも高くなると、銀行は貸出で儲けることができませんから、貸出を絞ります。 しかしながら、実際のデータをみると、長短金利差と銀行貸出態度の関係は不明確です。関係が全くないとは言えませんが、少なくとも現段階で銀行貸出態度は安定していますから、現在のところ逆イールドが景気後退を引き起こすメカニズムが強く働いているとは思えません。 ただし、理論的根拠に乏しくても、逆イールド発生が人々の景気後退懸念を喚起することで、実際の景気後退を招くルートを侮ってはいけません。14日に「逆イールド発生→株価下落」という事象を目の当たりにして、人々が実際に景気後退を意識し始めたのは事実です。当面は、金融市場でこの逆イールドが話題となりそうです。
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