マセラティMC20 アルファ・ロメオ・ジュリア アルピーヌA110(2) 似通った個性が「共存する偶然」
古くから続いてきたブランド間での「共有」
古くからフィアット・グループは、ブランド間で部品を共有することが珍しくなかった。フェラーリ288 GTOのステアリングコラム・レバーは、ランチア・デルタと同じなことは有名だろう。 ステランティス・グループになった今でも、その姿勢は変わらない。MC20のステアリングホイールとシフトパドル、ダッシュボード上のスイッチ、電子機器などは、ジュリア・クアドリフォリオと基本的に同じものだ。 ステアリングの感触も近い。ジュリア・クアドリフォリオの方が僅かに重いが、シルキーなほどスムーズで、感触はやや薄い。 サスペンションの構造も、実は似ている。フロント側は、アルファ・ロメオがセミ・バーチャル操舵軸を与えたと表現する、接地性を高水準で保つダブルウイッシュボーン式。ただし実際には、1.5ウイッシュボーンと呼べる構造にある。 フィアット・クライスラー時代は、アルファ・ロメオとマセラティの間で、スタッフの交流やアイデアの共有も積極的だったという。ジョルジオ・プラットフォームの開発に携わった技術者は、MC20の開発現場にもしばしば参加していた。 BMW M3と異なる個性を与えたスーパーサルーンは、素晴らしい仕上がりになった。同じ哲学をミドシップのスーパーカーに適用したいと考えても、ラテン気質の人なら不思議ではない。
個性の似通った素晴らしいラテン系トリオ
実際、フィリップ・クリーフ氏という重要人物がいる。彼はフェラーリで458 スペチアーレを完成させた後、アルファ・ロメオへ移籍。ジョルジオ・プラットフォームの開発を率い、MC20の特徴付けにも関わった。 そして最近、彼はフレンチ・ブランドのCEOへ就任した。AUTOCARの読者ならご存知かもしれないが、アルピーヌだ。 他方、アルピーヌの再生に尽力した、現在のステランティス・グループのトップ、カルロス・タバレス氏は、マセラティのCEOにサント・フィチリ氏を指名した。彼は現在、アルファ・ロメオのトップでもある。 舞台裏での人間の動きも興味深いが、今回のトリオはそれ以上。アルファ・ロメオは、ジュリアを提供するまで、本来の可能性を発揮させることなく、クルマ好きを長年ヤキモキさせてきた。マセラティや、ずっと眠っていたアルピーヌも。 エンジンだけで走るスポーツカーは、もうすぐ終焉を迎える。こんな時代に、個性の似通った素晴らしいラテン系の3台が共存するという偶然。きっと後年に、ほろ苦い思い出として振り返るのだろう。