「あなたに逮捕状」とかたる詐欺、被害額が前年比250倍の41億円…都内で1~11月
警察官を装い「あなたに逮捕状が出ている」などとかたる特殊詐欺被害が、東京都内で2024年1~11月に594件発生し、被害額は前年同期比約250倍の約41億7800万円に上ったことが、警視庁への取材でわかった。電話からLINEに誘導して逮捕状などの偽画像を示す手口で、全国各地で多発している。昨年の国内の特殊詐欺被害は過去最多を上回る見通しで、警察当局は警戒を強めている。
警視庁によると、都内では昨年1月以降、「捜査対象になっている」などと偽る詐欺の被害が徐々に増え、同9~11月は月100件程度で推移。被害額は11月までの特殊詐欺被害(約118億円)の約3割に上った。
携帯電話に直接電話がかかってくるケースが約7割で、「LINEで取り調べをする」などと言い、警察手帳や逮捕状の偽画像を送り付けて「保釈保証金」名目などで現金を振り込ませる手口が横行している。
被害者は30歳代、40歳代、50歳代、60歳代がそれぞれ2割ずつで、20歳代も1割いた。高齢者の被害が多い従来の特殊詐欺と違い、現役世代が狙われている。
杉並区の60歳代男性は昨年11月、大阪府警の警察官を装った男から「マネーロンダリング(資金洗浄)の容疑で逮捕状が出ている」と電話を受けた。男は「紙幣番号を調べるため、お金を振り込んでほしい」と説明。連絡をLINEに切り替えて送金額を伝え、男性に複数回にわたり計約8000万円を振り込ませたという。
各地の警察によると、同様の被害は少なくとも岩手、宮城、茨城、群馬、埼玉、山梨、静岡、和歌山、島根、香川、福岡、長崎などで確認されている。
警察庁によると、昨年1~11月、国内の特殊詐欺の認知件数(暫定値)は1万8606件、被害額は約581億円に上った。被害額はピークだった14年の約565億円を超え、すでに過去最多を更新している。特に、警察官を装う手口を含む「オレオレ詐欺」被害が多発し、11月末時点で前年同期比1992件増の5566件、被害額は約342億円で約3倍に上った。
警視庁幹部は「警察官が逮捕状や警察手帳の画像を送ることはありえない。不審な連絡を受けたら最寄りの警察署に相談してほしい」と注意を呼びかけている。