2023年の市場退出率トップは情報通信業 物価高が引き金で農・林・漁・鉱業も急上昇
2023年(1-12月)の退出法人数は4万8,444社 退出率は1.65%
2023年の普通法人の退出数(倒産+休廃業・解散件数)は、4万8,444社(前年比1.8%増)と2年連続で増加し、2013年以降の最多を更新した。前年まではコロナ禍で先行きの見通しが厳しい企業、代表者が高齢の企業の後継者難などで「休廃業・解散」が退出件数を押し上げていた。 2023年は、普通法人の「休廃業・解散」件数は減少したが、コロナ禍の資金繰り支援効果が希薄化し、さらに空前の物価高、人手不足など複合的な要因で「倒産」が大幅に増加し、退出法人数を押し上げた。2023年の普通法人の倒産は7,491件(前年比35.2%増)で、2017年(7,195件)以来6年ぶりに7,000件を上回った。 2023年の退出率は、前年と同水準の1.65%で、2013年以降では2020年1.72%、2018年1.68%に次ぐ3番目に高い水準だった。
産業別退出率 情報通信業が3%超で突出
2023年の産業別の退出率(普通法人全体に占める退出法人の割合)は、最高が情報通信業の3.46%で、唯一3%を超えた。ソフトウェア開発を中心とした情報通信業は、創業支援で小資本の新規参入が多いほか、市場ニーズや技術の変遷が早い。将来需要を見据えた戦略を立てられず、顧客獲得競争に敗れた企業を中心に淘汰され、退出率は高水準が続く。 次いで、金融・保険業の2.61%、卸売業の2.09%と続き、上位3産業の退出率は2%を超えた。 前年からの上昇幅は、農・林・漁・鉱業1.58%が0.20ポイント増で最も上昇した。燃料や肥料、飼料などのコストアップで、退出法人数は前年比17.3%増と突出し、退出率も大きく上昇した。 次いで、小売業1.89%の0.15ポイント増と続く。消費者に最も近く消費動向に左右されやすい小売業は、物流費や仕入価格の上昇を価格転嫁できない企業も多い。また、退出法人数の増加率でも、農・林・漁・鉱業に次ぐ9.1%増だった。母数の普通法人数は31万6,845社(前年比0.14%増)で伸び悩み、退出率が上昇した。