2023年の市場退出率トップは情報通信業 物価高が引き金で農・林・漁・鉱業も急上昇
産業別退出指数 2023年は情報通信業が190.5で最高
2013年を基準年(指数=100)とし、退出法人数の推移を指数化した。 全産業の2023年の退出指数は139.7で、前年から2.5ポイント上昇し、2020年の138.0を上回り、2013年以降で最高になった。 産業別では、2023年のトップは情報通信業の190.5で、前年から5.6ポイント低下した。ただ、2013年との比較では退出法人数は1.9倍の高水準で推移している。ビジネス関連のソフトウェア開発やDXコンサル業など需要は高いが、ノーコード・ローコード開発プラットホームの普及でシステム内製化が加速するなど環境の変化が大きく、退出企業は増加傾向にある。 次いで、普通法人数と退出数がともに最多で、新陳代謝が激しいサービス業他が185.0、NISAなどで活発化する金融商品取引業などで新規参入、退出数が多い金融・保険業が180.3で続く。上位3産業の顔ぶれは前年と変わらなかった。 退出指数が最高を更新したのは、農・林・漁・鉱業、運輸業、サービス業他の3産業。 農・林・漁・鉱業は172.6で、前年(147.1)から25.5ポイント上昇と大幅に指数が上がった。 運輸業は120.5で、前年(114.8)から5.7ポイント上昇した。2019年までは震災特需や民間建設投資の高まりに支えられ、指数が100を下回っていた。コロナ禍以降は、荷動きの停滞や原油価格の上昇に加え、働き方改革による「2024年問題」で深刻な人手不足、人件費上昇に見舞われ、指数が100を超え、退出する法人が相次いでいる。 ◇ ◇ ◇ 原料価格や燃料費、人件費などの上昇が中小企業の収益を圧迫している。こうした状況を受け、2024年上半期(1-6月)の倒産(負債1千万円以上)は4,931件(前年同期比21.9%増)と、年間1万件に迫るペースで推移している。政府は中小企業支援の方向性を経営改善や事業再生に舵を切り、企業は自立・自走が求められている。ただ、足元で過剰債務の解消にめどが立たない企業も多く、社会保険料・税金滞納に起因する倒産も急増している。支援の網からこぼれ落ち、経営再建が見込めない企業を中心に、2024年以降も法人の退出率は高水準で推移する可能性が高い。