「老後資金2000万円問題」が「4000万円」に増額!? 円安・物価高でも夫婦合わせて「月30万円」の年金があれば大丈夫なの? 実際の生活をシミュレーション
老後の30年間でおよそ2000万円が不足するという「老後2000万円問題」が2019年に話題になりましたが、2024年5月には「老後4000万円問題」として、再びニュースになりました。 たった5年の間に、老後に不足するとされる金額が2000万円も増えたのは、どのような経緯があったのでしょうか。また、老後に4000万円も不足する未来では、どのような老後の生活が待ち受けているのかシミュレーションしてみました。 ▼夫婦2人の老後、「生活費」はいくら必要? 年金額の平均をもとに必要な貯蓄額も解説
老後資金4000万円問題の根拠は、昨今のインフレ
老後資金が年金だけでは「4000万円」不足するという根拠は、今後物価上昇が3.5%で続いた場合の試算の結果です。 総務省の調査では、物価の総合指数が2022年度と2023年度を比較して3.0%上昇しています。日本ではここ最近まで、「デフレ」という言葉のほうがよく聞かれ、「インフレ」している感覚は少なかったかもしれません。しかし、10年前の2013年度から毎年平均して約1.1%ずつ物価上昇は起きていたのです。 今後、仮に毎年3.5%ずつ物価上昇を続けた場合、図表1のグラフのように、20年後には約4000万円、30年後には約5600万円の老後資金が不足する計算になります。 図表1
2019年の不足額を2000万円として、毎年3.5%物価上昇した場合の不足額を計算し筆者作成 日本の年金制度は「物価スライド」のため、2024年度の年金額は物価上昇に伴って約2.7%増加しました。しかし、今後毎年約3%の年金増加を期待することは難しいでしょう。
老齢年金を夫婦で月30万円受給する世帯の生活をシミュレーション
例えば、現在夫婦ともに65歳で、2人合わせて毎月30万円の年金を受給している場合は、老後資金を年金のみでまかなえるのでしょうか。このシミュレーションでは、次の条件で試算しました。 ・夫婦合わせて年間360万円の年金を受給 ・年金は物価スライドで年2.0%ずつ上昇 ・支出は、総務省の調査結果より年間300万円とする ・支出に関しては、物価上昇を見込んで年3.5%ずつ上昇 この条件で計算した結果が図表2です。 図表2