NATO東京連絡事務所開設の現実味は? 日本含むアジアと関係強化目指す新事務総長…ウクライナ戦争「紛争煽り続けている」と中国・北朝鮮を強く非難
北朝鮮のロシア派兵で迎えた「ターニング・ポイント」
偶然にもNATO国防相会合開催中のタイミングで、北朝鮮兵がロシア西部に派遣されているとの情報が明るみに出た。同日、ルッテ氏はウクライナのゼレンスキー大統領と会談後、共同記者会見に臨んだ。ゼレンスキー大統領は北朝鮮が兵士1万人の派遣準備をしているとの情報を得たことを明かした。 一方、NATOはこの時点で北朝鮮兵派遣の情報は得ておらず、隣りに立つルッテ氏は「北朝鮮兵が戦争に直接関わっているという証拠は確認していないが、北朝鮮が多くの面でロシアを支援していることは確かだ」と述べるにとどめた。 北朝鮮兵がロシア西部のクルスク州に配置されたことをNATOが確認したのは、この日から11日経った後だった。緊密な連携をめざすIP4には韓国が含まれているにも関わらず、確認にこれだけの時間を要したことには疑問が残る。 さらにおよそ1週間後の11月上旬、ルッテ氏は「北朝鮮兵士のヨーロッパ派遣はターニング・ポイント(転換点)」と題する論説をメディアに寄稿した。 NATO ルッテ事務総長: 北朝鮮の軍隊がヨーロッパの地に足を踏み入れたことは、間違いという意味で歴史的なことである。ロシアが外国軍を招き入れたのは、この100年で初めてのことだ。 ロシアのプーチン大統領が北朝鮮兵派遣の見返りとして、資金難にあえぐ金正恩政権を軍事面で支援していると非難。さらに中国に対して、見て見ぬふりをせずに両国に対する影響力を行使して、行動をやめさせるよう要求した。 そしてここでもまた、IP4との連携の必要性に触れ、政治と防衛産業の面での協力体制の強化を訴えた。
NATO-アジアの安保協力に限界か
同じ価値観を有する国家同士が地理的な距離を乗り越え、安全保障上の課題を共有しながら連携を緊密にしていくことの意味は大きい。例えばフランスはインド太平洋に領土を有する。 しかし、NATOとアジアの連携に限界を指摘する声もある。 NATOの元防衛投資担当事務次長、カミーユ・グラン氏は今年4月に発行されたフランスのシンクタンクのインタビューの中で、4つの理由を挙げて説明する。 第一はNATOの資金・人材不足。第二にNATOにおけるアメリカのリーダーシップの欠如。NATOがアジアに関与することの必要性を訴えていながら、関与の在り方を具体的にヨーロッパの同盟国に説明できていないという。 第三にはIP4側に、NATOとのパートナーシップに対する温度差があるという点。日本とオーストラリアが積極的な姿勢を見せているのに対して、韓国とニュージーランドは消極的。さらに各国がアメリカやヨーロッパ諸国と2国間または複数国間の同盟関係を結んでいる。例えばオーストラリアは米英との軍事同盟AUKUSを優先して考えており、そうした意味では日本がNATOとの連携に最も前向きだとしている。 そして第四にNATO加盟国の中で足並みが揃っておらず、表向きにはアジアの重要性を主張するアメリカに同調しながらも、現実にはヨーロッパの多くの国がNATOがヨーロッパに重点を置くことを望んでいる実態があること。こうした状況の中で、日本は、異なる枠組みの中で適切なバランスを取ることが必要だと提言している。
【関連記事】
- プーチン大統領とトランプ次期大統領が直接会談に意欲 ロシア側が“複数の国から会談場所の提供の申し出が来ている”と明らかに
- ウクライナ攻撃に使用されたミサイルに“日本製パーツのコピー品”か…オレシュニク、KN-23ミサイルの残骸から浮かび上がること
- ロシア軍高官ら殺害容疑でウズベキスタン人1人拘束と当局が発表 モスクワ市内で仕掛けられた爆発物の爆破に巻き込まれ死亡
- 「殺された北朝鮮兵の顔を文字通り焼こうとしている」ゼレンスキー大統領、ロシアが北朝鮮兵士の犠牲を隠そうとしていると非難 映像を初公開
- トランプ氏が金正恩総書記のロシア派兵批判「私が大統領就任前にやるべきでなかった」ウクライナ侵攻は中東問題より解決困難との見方