実に残念、期待の不眠治療アプリの保険適用が不認可に
実質的に大部分の患者は利用できないことに、欧米では複数のアプリが保険適用
正月気分がようやく抜けた1月中旬、我々睡眠医療に携わる者にとってビックリかつガックリするニュースが飛び込んできた。それは国の審査機関「プログラム医療機器調査会」によって不眠治療に効果があると認められたアプリが、健康保険を使った診療としては認可しないことが決まったというものだ。平たく言えば、「医療機器として使ってよいけど、国は治療費を出しません」と言うことである。 【動画】本当に眠りながら食べまくる女性たち、謎の病 認可しないと決めたのは別の国の審査機関である中央社会保険医療協議会(中医協)の医療技術評価分科会である。中医協は日本の健康保険制度や診療報酬改定について審議する厚生労働相の諮問機関で、ここで了承が得られた診断・治療法のみが保険診療に用いることができる。今回のアプリは中医協の審議にかかる前にその前哨戦である医療技術評価分科会で門前払いを喰った形だ。保険診療が認められなければ患者は治療費を全額自己負担しなくてはならず、実質的に大部分の患者は利用できないことになる。 アプリに健康保険が適用されるのを意外に思われる読者もいるかもしれない。だが、診断や治療を支援するソフトウエアは「プログラム医療機器」として、以前からMRIや心電図、エコーなどの検査装置に組み込んだ形で保険診療に利用されてきた。 近年はプログラム単体で診断や治療に応用できるものが登場し、例えば、禁煙や血圧管理のための生活習慣指導用アプリなどが保険診療に用いる治療として認可され、医師の指示があれば患者がスマホやタブレットなどにダウンロードして自宅で用いることができる。 これら新しいタイプの医療機器の開発は、国が進める医療DX(デジタルトランスフォーメーション)政策とも合致しており、2021年には厚生労働省内にプログラム医療機器を評価するための部署(プログラム医療機器審査管理室)を新設し、医療機器の審査を担う「医薬品医療機器総合機構」にも、プログラム医療機器を専門とする審査室(プログラム医療機器審査室)を設けるなど積極的に後押ししている。 このたび保険診療が見送られた不眠治療アプリは、不眠症患者向けの認知行動療法を支援するプログラム医療機器として開発された。認知行動療法とは患者さんの疾病に対する誤った認識(認知)や、症状を悪化させるような生活習慣(行動)を修正することでストレスや症状を緩和する治療法である。