「遺産分割トラブル」になりがちな特殊ケース、5つ…それぞれの注意点を相続専門税理士が解説
トラブルになりがちな遺産分割……相続分の調整が必要なケース
遺産分割では、民法で定められた相続割合(法定相続分)をもとに誰がいくら相続するかを決めます。ただし、次のような場合は法定相続分で遺産分割するとかえって不公平になる恐れがあります。 (1)多額の生前贈与を受けた相続人がいる場合 (2)故人に多大な貢献をした相続人がいる場合 このほか、相続税の負担を考えたときに、法定相続分で遺産分割することが最適とは言えない場合もあります。ここからは遺産分割で相続分の調整が必要な2つのケースをみていきましょう。 (1)多額の生前贈与を受けた相続人がいる場合 故人から多額の生前贈与(特別受益)があった相続人がいるときは、特別受益があった相続人とそれ以外の相続人で公平に遺産分割できるように相続分を調整します。 具体的には、特別受益を遺産分割の対象である相続財産に持ち戻したうえで、それぞれの相続人の相続分を決定します。特別受益があった相続人は、相続分から特別受益を差し引いた分だけの遺産を受け取ります。 ただし、故人が遺言で特別受益について「持ち戻しの免除」を表明していれば、その財産は相続財産に持ち戻さずに遺産分割を行います。結婚して20年以上になる夫婦の間で自宅を生前贈与または遺贈した場合も、その自宅は相続財産に持ち戻さないことになりました(2019年7月1日施行)。 (5)介護など故人に多大な貢献をした相続人がいる場合 故人を介護していたなど多大な貢献をした相続人がいる場合は、その貢献に見合った額の遺産(寄与分)を優先的に割り当てることが認められます。通常期待される程度を超える貢献であれば、介護のほか借金の肩代わり、事業の手伝いなども寄与分として認められます。 相続税の負担について考慮が必要 遺産分割では、相続人が負担する相続税について考慮することも必要です。特例を適用して節税するのであれば、相続分を調整する方がよい場合もあります。 相続税の申告で配偶者の税額軽減を適用すれば、多くの場合で配偶者に相続税はかかりません。配偶者が多くの遺産を相続すると節税になりますが、次に配偶者が死亡したときに子が負担する相続税が多くなるというデメリットもあります。故人と子が同居していた場合は、子が自宅を相続すると節税ができます。小規模宅地等の特例を適用すると、自宅の土地の評価額を最大で80%引き下げることができます。 これらの特例を活用した場合に、どのように遺産分割すれば最も税負担が軽減されるかについては、相続税に強い税理士に試算してもらうとよいでしょう。