「僕の中では“鬼ごっこ”なんです」バスケ富樫勇樹(31歳)が語った言葉の真意は? 世代交代、八村騒動…混沌続く代表チームで第一人者が思うこと
11月21日と24日に行なわれたバスケットボールのアジア杯予選。日本代表チームはモンゴルとグアムに連勝を収め、来夏に開催されるアジア杯の出場権を獲得した。パリ五輪という大舞台を終え、新たなフェーズに入った日本代表。長らくチームの核として活躍する司令塔はいま何を思うのだろうか。《全2回の1回目/吉井裕鷹編を読む》 【写真で比較】「今よりちょっとトガってる」8年前の“声出し拒否”時代の富樫と、背中で引っ張るいまのベテランらしい姿…代表引退の比江島と昨年W杯での熱い抱擁&パリでの日本代表の戦いぶりも見る 「僕は4年後に向けた『鬼ごっこ』をしていくつもりでいるので」 開放的な空気の漂うグアムの地で、富樫勇樹はそんな言葉を発した。一体、どういう意味か。 バスケットボールの日本代表は、2028年のロス五輪への新たなスタートを切った。それが、2試合の行なわれた今月のアジア杯予選だ。 このタイミングで、およそ12年にわたって日本代表をけん引してきた比江島慎は、代表から退く意向を明かした。今回は自身の所属する宇都宮ブレックスの本拠地・宇都宮で初めて代表戦が開催されるなど、実に多くの要因や理由があり、パリ五輪ではなくこの2試合までは戦うことにしたという。
富樫の発言に込められた「意味」
一方の富樫は、「今後も日本代表で戦い続ける」と宣言した。 ただ、これからどのような気持ちで戦っていくのかについては、あまり語ってこなかった。唯一、その意向が垣間見えたのは最初の試合となったモンゴル戦後のこんな一言だった。 「これからは千葉ジェッツでプレーしているような感覚でプレーしてきたい」 アウェーゲームのために訪れたグアムで改めて、その真意を問うた。 「実は、あれはプレーというより、気持ちについての話なんですよ。日本代表(のユニフォームと活動)に重みがあるということは、これからも変わりません。ただ、もうちょっと『気楽』にやろうかなと」 「気楽」という言葉だけを聞くと、責任を放棄したように聞こえるかもしれない。もちろん、そうではない。 その責任感や自覚は、リスタートを切った今回の活動でも見て取れた。 例えば、初戦のモンゴル戦の第4Q残り1分26秒で日本はタイムアウトをとったが、トム・ホーバスヘッドコーチ(HC)は、あえて指示を一切送らなかった。バスケ界では選手に自覚を促し、自主的に考えさせるためにHCがそのようなアクションを起こすことは少なくない。 あのときコートから戻ってきた若手選手たちに向け、話をしていたのが富樫だった。 「あの時間帯、トムさん就任後の初戦となった中国戦を思い出しました。どういうバスケットをしたいのかを上手く表せない感覚というか。僕らもそうだったので。ただ、代表に入ったからといって、急にシュートが上手くなるわけではないじゃないですか? だから、自分の強みを出してほしいなと思って。伝えたのはそういう感じのことですかね」 続くグアム戦では、FIBAランキングで59ランクも下の80位にいるチームに怒涛の追い上げを許し、最大19点もリードしていたにもかかわらず、最終の第4Qで一度は同点に追いつかれてしまった。試合後、富樫は悔しさを隠さなかった。 「あの時間帯に出ていた僕には大きな責任があります」 比江島の代表ラストゲームについて言及するときも、ユーモアを交えて話をする普段の富樫はいなかった。 「もしかしたら、彼の最後になる試合なのに……もっと良い形でプレーしたかった」 リーダーとしての自覚ある振る舞いは今回も健在だった。代表キャプテンの大役を任されるようになった東京五輪以降の3年間と大きく変わったようには見えない。では「気楽」にとは、どういう意味なのか。 「代表では試合数も少ないし、ワンプレーごとの重みがすごくあります。ただ、今までは、国を背負う意味や重みを意識すぎていて『ミスしないように……』という意識でプレーしていた部分が少なからずあったのかなと。自分のなかでは良い選択だと思ってやっていたプレーであっても、代表ではオフェンスでもディフェンスでも、積極性が少し欠けていた気がするので」 Bリーグ史に残るような数々のシュートを決めてきた彼だからこそ気づける、感覚の違いがある。 「一つひとつのシュートが大事なのは確かですが、代表だと1本入ったか、外れたかに左右されてしまっている感覚がずっとあって。ジェッツにいるときは、シュートを連続で10本外そうが、次のシュートを打つときには、その試合の1本目を打つのと同じ気持ちでいられるんですけど……。だから、代表では、もう少し『気楽』にやっていきたいという気持ちがあるんです」
【関連記事】
- 【つづきを読む】「日本はチームバスケです」…バスケ代表・吉井裕鷹(26歳)がアジア杯予選で語った胸中「コミュニケーションが大事」「話さないとチームがつながらない」
- 【写真で比較】「今よりちょっとトガってる」8年前の“声出し拒否”時代の富樫と、背中で引っ張るいまのベテランらしい姿…代表引退の比江島と昨年W杯での熱い抱擁&パリでの日本代表の戦いぶりも見る
- 【あわせて読む】「八村が覚悟を決めたように語りだした…」八村塁の“協会批判”はなぜこのタイミングだった? NBA会見で一体何が「“河村勇輝と再会”から一転…」
- 【話題】八村塁が“協会批判”で揺れるバスケ界「(ホーバスHCと)ボタンの掛け違いが始まったのは…」「誰かひとりが悪者というわけでもない」
- 【こちらも読む】ドイツ21点差、セルビア19点差の“完敗”…それでもバスケ日本代表に富樫勇樹(30歳)がいる信頼感「声出しが恥ずかし」かった男はなぜ変わったか