猪年と豚年 人類の豚肉への遥かなる熱い情熱の歴史
亥年は日本において猪が干支にあたります。しかし、中国や他のアジアの国では、猪ではなく豚が干支なのをご存じでしょうか。この違いが生じた理由は、人類の豚肉に対する熱い情熱の中に隠されているようです。古生物学者の池尻武仁博士(米国アラバマ大学自然史博物館研究員・地球科学学部スタッフ)による「生物40億年:北米アラバマからのメッセージ」。今回は、豚の起源に迫ります。 ネアンデルタール人はイヌの価値気づかず絶滅?イヌ家畜化はいつ始まったか
中国やベトナムなどでは「豚」が干支
明けましておめでとうございます。 「生物40億年:北米アラバマからのメッセージ」では過去2年、新年の始まりには、縁起物である干支にちなんだ動物の起源についてとりあげてきた。 そして今年の干支は猪。2019年も、やはりこの流れに従って書きはじめてみたい。 猪は「ね(子)、うし(丑)、とら(寅)…」の語呂で知られる12種類の干支の中で、しんがりに位置する動物だ。すぐ前の戌(いぬ)年で生命サイクルの終焉(死)を迎えた後、再び新たな生命の息吹(種子)が芽生えはじめる時期を指すそうだ。 猪には後述するように、大型の哺乳類たちの中でも子だくさんだ。そして、かなり子煩悩の傾向もあるという。このことからも、生命サイクルの中で具体的にこのステージ(新たな生命が息吹く時期)にふさわしいと言えるだろう。 そして猪突猛進、猪武者、猪勇(ちょゆう)などの表現に見られるように、目的に向かってまっしぐらなイメージも併せ持つ。私も猪のようにまっしぐらにこの「生物40億年のメッセージ」の記事を書き続けていきたい。 日本では猪の姿がネット上や街中、年賀状などにおいて非常ににぎやかに躍っていることだろう。しかし、すぐ隣の中国、そしてベトナムやタイなどのアジア諸国では、猪ではなく「豚」が干支として君臨している事実をご存じだろうか? 歴史上、干支というコンセプトはもともと中国において誕生した。3000年以上前の中国古代の王朝「殷」の時代のことだと考えられている。それではどうして本家本元である中国の「豚」ではなく、「猪」が日本において干支として活躍しているのだろうか? 新年早々、豚汁で作った雑煮をほおばりながら、こんな疑問が私の胸に浮かんできた。