世界が絶賛! 映画『最後の乗客』が上映開始、全国順次ロードショー…1台のタクシーが被災地で、過去から現在までの思いを繋げるストーリー
55分という短い上映時間の中で語られる思いとは
日本でタクシーといえば、まずトヨタ車が多い。本作でも登場するのはトヨタの3代前の「プリウス」と「クラウンコンフォート」だ。かつては日産も「セドリック」タクシーをラインアップしていたが、現在ではほとんど目にすることはなくなった(地方都市に行くとたまに三菱「ギャラン」ベースのタクシーを見かけたりもする)。なぜにトヨタ系のタクシーばかりなのか、は諸説あるようで、頑丈であるとか、ドライバーに好まれるなどを聞く。だが結局はタクシーマーケットの問題なのだろう。現在は都市部などで目にするのはほとんどがトヨタ「ジャパンタクシー」だ。 劇中で登場する遠藤が運転するクルマもクラウンコンフォート。後部座席に女性3人を乗せるには充分の広さのあるクルマだ。そして地方都市ではよく見かける車種でもある。それは10年前でも変わらなかっただろう。変わらない、ということに意味があることは、映画を観ていくと段々と分かってくる。 上映時間55分という短い時間の中で語られる思い。粗筋を語るのは簡単だ。しかしながら本項でそれをするのはあまりにも違うと思う。しかしながら僕がどうしても伝えておきたいことがひとつある。それはタクシーに乗り込んで来る若い女性=みずきの発する言葉だ。「世間の人たちは震災の日を忘れないようにしよう、というけれど、わたしは思い出したくもない」というひと言だ。その言葉は先に述べた「頑張れ」という、他者に安易に投げかけられる言葉にも共通の意味合いを持つ。 われわれは考えなければならない。自分が発する言葉のひとつひとつに責任を持ちながら。SNSにすっかり征服されてしまった世の中であったとしても。そして気づくのだ。「そうか、タクシー=クルマとは命を運ぶ仕事だったのだ」と。本作は“震災後の世の中”を、夜中のタクシーの、小さなヘッドライトのように照らし出している。 劇中車:トヨタ「プリウス」、「クラウンコンフォート」 映画『最後の乗客』 公開日:2024年10月11日 上映時間:55分 監督:堀江 貴 出演:岩田華怜、冨家ノリマサ、長尾純子、畠山 心、谷田真吾、大日琳太郎
永田よしのり
【関連記事】
- 【画像】世界の映画賞席捲! 映画『最後の乗客』に登場するクルマとキャストを見る(9枚)
- ◎『帰ってきた あぶない刑事』のロケ地を歩いてみない? タカとユージになりきって港町ヨコハマめぐり【映画ロケ地巡礼】
- ◎映画『007/ゴールドフィンガー』60周年! 劇中にロールス・ロイスが登場したのを知ってた? ナンバープレート「AU 1」の秘密とは?
- ◎昭和・平成に青春を過ごした大人に贈る「胸キュン」ラブストーリー! 日産90周年記念ムービー『NISSAN LOVE STORY』を映画評論家が読み解きました
- ◎名匠マイケル・マンが描く「エンツォ・フェラーリ」の知られざる素顔…映画『フェラーリ』が車好きに問う「クルマ」のレゾンデートルとは