ジェンダーギャップ指数15年連続1位のアイスランドとG7最下位の日本との「明らかな差」
低賃金のケア労働に従事する移民女性
なぜなら、ここまで平等な賃金実行のためにさまざまなアプローチをしているアイスランドでも、全体では12%の男女の賃金格差が依然として残っている。それが2023年のスローガンにもつながっている。 「女性の休日」主宰者の一つである女性権利協会会長のタチアナ・ラティノヴィッチさんはこう話した。 「職業や働き方の違いを乗り越えるために、どんなスローガンだったら女性たちが連帯できるか地域で集会を開き、何度も話しました。アイスランドは男女平等が進んでいるとはいえ、それでもまだ賃金格差はあるし、家事育児はまだ女性に偏っています。性暴力やハラスメントへの対応も十分ではない。どんな女性たちでも求めているのは、職場・家庭における真の平等だろうとなったのです」 2023年の「女性の休日」の際、女性権利協会は、より多くの女性たちがデモに参加しやすくなるよう、企業経営層に「女性たちをデモに参加させてください」という手紙を出したという。特に数時間職場を離れることによって、その間の賃金が減ることを恐れていたのは、移民や外国籍の女性たちだったからだ。 全国民39万人のうち移民は約7万人に上り、歴史的にはポーランドからが多いが、今では医療現場などではフィリピンからの移民が増えている。移民の女性たちが就いているのが保育士や介護士、看護師などのケアワークと言われる職業で、このケアワークの賃金の低さが男女の賃金格差全体が解消しない大きな要因となっている。前述した同一賃金証明法の認証は「同一労働同一賃金」を求めているため、女性が比較的低賃金の仕事に多く就いていれば、全体の賃金格差を解消することはできない。 「前首相もケアワークの賃金を上げることに取り組んでいたが解消できていません。女性が家庭で担ってきた保育、介護、看護などケアワークへの評価、つまり賃金の見直し、待遇改善はまだこれからです」(女性権利協会会長のラティノヴィッチさん) 平等人権省のグズビャルトソンさんも12%の格差の背景には同様の問題を指摘していた。そしてパイロットプロジェクトという形で、性別による職種の偏りの是正に向けた取り組みを進めると同時に、ケアワークがなぜ低賃金なのかという分析も始めているという。 ◇”何度もくりかえすようだが、世界で最も男女平等が進んでいる国で、今でも女性のデモが敢行されている”この1文が、アイスランドの「ジェンダーギャップ指数1位の理由」を象徴している。常に平等を求めて発信し続け、進化を求め続けているのだ。 賃金格差とともに重要視している「男女平等政策」のひとつ、男性の育児休業取得の義務化について後編「日本は42年遅れてる? ジェンダーギャップ指数15年1位の国が「男性育休義務化」を推進する意味」で詳しくお伝えしていく。
浜田 敬子(ジャーナリスト/前Business Insider Japan統括編集長)