ジェンダーギャップ指数15年連続1位のアイスランドとG7最下位の日本との「明らかな差」
25人以上の企業に同一労働同一賃金認証を義務化
アイスランドが最も力を入れているのが、男女の賃金格差の解消だ。 アイスランドでは2018年に格差解消に向けて、従業員数25人以上の企業に対して同一労働同一賃金を証明する認証の取得を義務付けた法律、同一賃金証明法が施行されている。アイスランドには以前から性別による差別を禁じ、同一労働に従事する男女には同じ賃金、同じ雇用条件を義務付けた法律はあったが、認証取得まで課したのは賃金差別の解消を徹底するためだったという。 男女同一賃金の徹底は、2017年に就任したカトリン・ヤコブスドッティル前首相肝入りの政策だった。2022年のNHKの取材に対して首相は、「働いている男女が同じ仕事をしているなら、同じ賃金をもらう。それは女性の経済的自立に関わる非常に重要なこと」「賃金格差は他の多くのことに影響を与える」と述べている。 認証制度では同一労働について仕事を細かく定義しているため恣意的な評価が入りにくく、日本のように働き方を理由に大きな給与格差がつくことはない。認証は3年に1度見直され、取得していない企業については政府機関に通報することが推奨される他、1日当たり最高で50000アイスランド・クローナの罰金も課される。 この同一賃金証明法のポイントは対象の規模だ。実施期限は企業規模によって違うが、2023年までに従業員25人以上の全企業は同一労働同一賃金を達成しなければならないとされている。日本でも2022年から企業の男女賃金格差の開示が義務化されたが、従業員規模は301人以上。さらに義務化されているのは開示だけで、その先の解消までは含まれていないことと比べると、アイスランドは中小企業に至るまで差別を解消させる実効性にこだわっていることがわかる。
「最終的な差別は賃金に反映される」
今回の取材の中でしばしば聞いたのは、「最終的な差別は賃金に反映される」という言葉だ。つまり賃金での平等を実現することを、平等のバロメータにしているのだ。 アイスランドの男女平等賃金に対する取り組みは古く、1961年に性別による賃金差別を禁止した賃金平等法が制定されている。だが当時は、女性は男性の賃金の60%程度というのが実態だった。 1975年10月24日。前出の首相官邸の前などレイキャビックの中心地を女性たちが埋め尽くした。「女性の休日(Kvennafrí/the Women’s Day Off)」と言われるストライキで、女性の9割が職場を離脱し、主婦も家事を離れた結果、社会は大きな混乱に陥った半面、社会がどれほど女性の働きによって支えられているかを実感することになったと言われている。その時のスローガンは「私たちは男性の60%ではない」。主導したリーダーの1人、ビグディス・フィンボガドッティルさんは、初の女性大統領に就任した。 その後、「女性の休日」は5回実施されている。直近では2023年10月24日。何度も繰り返すようだが、世界で最も男女平等が進んでいる国で、今でも女性のデモが敢行されているのだ。 2023年には当時のヤコブスドッティル首相も仕事を休んで参加するなど、7万~10万人の女性が参加したと報じれている。国民の約4分1に当たる女性が職場を離れるために、ほとんどの学校や公的機関、金融機関は休業になった。 そしてこの「女性の休日」で求めていたものも男女の賃金格差の解消だ。スローガンは「Do you call equality? Disequality? (あなたは平等を叫ぶ? 不平等を叫ぶ? )」だった。