堂本剛に森崎ウィンが聞くエンターテイナーの生き方「好きなことだけやっていくのって大変ですか?」
大人からよく「好きなことだけでは生きていけない」と言われてきた
――劇中、「自分の好きなことだけやって生きていける大人なんて、そんなにいないよ」という台詞がありました。ぜひこの台詞についておふたりが感じたことを聞きたいのですが。 堂本 (森崎に)どうですか? 森崎 まさに親とか先輩とか、20代でバイトしていたときに店長クラスの人から言われてきた言葉で。そのときの僕はまだ世間を知らないから、「俺はやりたいことをして生きていくんだ」って若さゆえの尖りで突っ走ってたんですけど、30を過ぎた頃くらいから、好きなことだけではやっていけないという言葉の重みを改めて知ることが結構あるんですよね。 堂本 うんうん。 森崎 好きなことをやるためには、やらなきゃいけないこともやらなくちゃいけないっていう。これは仕事だけじゃなく日常生活もそうですけど、自分中心ではすべては回らないじゃないですか。それが今の日本社会だよなって感じることが多いので、あの台詞は夢とか仕事に限らず、普段の生活から言えることなのかなと思いました。 堂本 僕はその逆で。 森崎 そうなんですか。 堂本 僕も若いときにさんざんそういうことを言われてきた。そのときは僕もなにくそ根性でいろいろ思ったりもしたし、逆にそうなのかもしれないなと納得したりもして。両極の自分がいた感じはある。 森崎 剛さんは、ちょっと俯瞰的に自分を見てるところがあるんですか。 堂本 AB型なんで、ちっちゃい頃から俯瞰で見る癖があるの。めちゃくちゃ物事を冷静に見ちゃうのよ。 森崎 うわ~って熱くなっているのを、上のほうからふ~んって眺めている自分がいるみたいな。 堂本 自分の感情が本物であればあるほど、その逆の感情も感じ取ろうとしちゃう。たとえば、僕にはこれが大好きだって言えるものがある。でも、それを自分と同じくらいの熱量でみんなが好きなわけじゃないし。逆に言うと、僕には僕の好きなものがあるんだから、他の人にもその人にとっての大好きがあるよな、ということを自然と考えちゃうんですよね。俯瞰で物事を見ながら、じゃあ僕の感情は今どうあるべきかを決める癖はあると思う。 森崎 何となくわかる気がします。 堂本 そういう時期を過ぎて、「自分のやりたいことだけやって生きていけるやん」というのに気づきはじめたのが、今という感じかな。 森崎 マジっすか。 堂本 特に僕の場合は、今、自分ひとりでやってるので。そうすると、自分のやりたいことだけやって生きていくというふうにならざるを得ない。 森崎 それは、自分のやることを自分で決められるからですか。 堂本 そう。ひとりだと自分に向いていないとか合ってないとか思うお仕事をやることがないので。「これ、どうしてもやってもらえないですか」「え~、僕で大丈夫ですか? わかりました、ちょっと頑張ってみます」みたいなことがない。今は自分自身が変わることなく、どういう場所や人と関わることでエンターテインメントができるかが一番。だから、好きなことだけでは生きていけないみたいなジレンマは感じていないかな。